<<犬と高湿熱暑>>
犬にとって湿度の高い熱暑は地獄である。
それは寒気よりも死に直結している。
日本の夏は、ほとんどが暑いばかりか湿度が高い。
そこは人間が想像する以上に危険環境なのである。
そこでは「生きるか死ぬか」の瀬戸際の毎日なのだ。
たとえば人は「ミストサウナ」に一日入っていられるか??
どんなサウナ好きでも、そんなことはできないだろう。
たとえて言うなら、夏の犬たちは、そういう状況なのだ。
人間なら発汗で体温を調節できるが、
犬はほとんど呼吸によって体温を調節するから、
一瞬たりとも安息を得られない極限状態が続くのである。
毎日毎日延延と、そういう状況を耐えるのである。
それが野生状態ならば話は変わる。
犬は風通しの良い日陰を選べる。
あるいは深く穴を掘って、そこで暑さを凌げる。
あるいは水浴びして涼を得ることができる。
だが飼われている犬は、そういったことができない。
ただただ忍耐、それだけなのである。
気の遠くなるような毎日だと思う。
心ある飼主は、細心の注意を払っているだろう。
それが「生きるか死ぬか」の大問題だと分かっているだろう。
だが総体的に見れば、飼主たちは呑気に構えている。
飼主たちに深刻さが足りないと感じてならないのだ。
ようするに、犬の身体の声が聴こえないのだろう。
ようするに、犬の心境を見ることができないのだろう。
あるいは半ば「どうでもいいや」と思っているのだろう。
酷暑地域では、6月初旬から9月下旬まで厳重注意のはずだ。
飼主は自分が高湿高温を感じたら、
犬はその何倍もそれを感じていると心得ておくべきである。
ところで我家は標高1300mの森の中だが、
ここではすでに「夏」が終わろうとしている。
そもそも低地から見たなら夏が無いと言えるだろう。
もはやひたすら、あの冬に向っているのだ。
全てが凍る零下22度の冬のことである。
我家の犬たちは、ここの気候に順応している。
冬は白銀の極寒世界だが、この森で安息している。
人は「寒くて可哀想だ」と言うかも知れないが、
高湿熱暑地帯から較べれば別天地である。
ここでの生活を維持していくのは至難だが、
家族たちの安息のために全力で乗り越えていく。
※因みに「北極エスキモー犬」にとっては、
ここの冬の寒気が丁度快適な気温のようだった。
彼らを車に乗せた時には、だから真冬でも暖房を切った。
真冬でも暖房を切り、なおかつ半ば窓を開けて走った。
外気温はなにしろ、前述のようなレベルである。
人間の私にとっては途方も無く寒かったのだが、
北極犬を車に乗せるということは、そういうことである。
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2012:08:13 ≫