<< ウサギの心 >>
 
私が通う仕事場の庭にウサギがいる。
とてもかわいいウサギだ。
私は小屋に行き、しゃがんでウサギと話す。
ウサギは、とても喜ぶ。
大喜びで、はしゃいで、小屋の中を駆け回る。
別に私は、おやつを持っている訳ではないのだ。
人参などを手にしている訳ではないのである。
ただ、話しかけているだけなのである。
ただ話しかけているだけなのに、
ウサギは大喜びで、はしゃぎだすのである。
その様子は、たとえば子犬のような感じである。
無邪気な子犬と同じように、ウサギははしゃぐ。
ウサギは、私が小屋に近づいただけで喜ぶ。
小屋を立ち去る時には、ずっと見送ってくれる。
寂しげに悲しげに、ずっと見送ってくれる。
だから私も、寂しく悲しく切なくなる。
 
夏に入るころ、小屋の増築をする予定だ。
小屋の中を三階建てに作ったのだが、
もっと広くしてあげたいので拡張工事する。
もちろん自分で作る。細部まで配慮して作る。
本当は部屋で一緒に暮らしてあげたいのだが、
ウサギには飼主がいるので、それはできないのだ。
 
ウサギは、おやつが欲しいのではない。
ウサギは、対話が欲しかったのである。
ウサギもまた、海よりも深い感性の持主だ。
ウサギもまた、無限の心の持主だ。
 
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2012:06:04 ≫