<< 森の命の歌 >>

四月も目前なのに、この森の気温は冬である。
夜明頃は零下10度とか12度である。
だからまったく雪が溶けない。
森はまだ、白銀世界のままである。
この白銀の森に、命たちが生きている。
いったいどうやって生きているのか。
どうやって食糧を探しているのか。
この酷寒の森で。雪に覆われた森で。
もちろん、空腹の日が多いだろう。
空腹の身で寒気に耐えてきたのだろう。
いつもそれを想っている。
それを想い、ただただリスペクトする。
絶食が続く辛さ。絶食で寒気に耐える辛さ。
この自分も、少しはそれを体験してきたから、
それが切実に、我が身に実感できる。
いつも、死と隣り合わせだろう。
彼らはいつも、死を垣間見ている。
その境界線ギリギリで生きているのだ。
ギリギリの淵で生きるということ。
その淵で勇気を振り絞って生きている。
最後の最後まで渾身の力で生きている。
誰を恨むことも無く。誰を妬むことも無く。
誰も恨まず誰も妬まず、全身全霊で生きている。
そして死のとき。
そして死のときに彼らは。
己ひとりで、己のすべてで死と向き合う。
己ひとりで、己のすべてで死を迎える。
死とは、それほどまでに厳かなものである。
彼らのその、「命の歌」を聴いてきた。
彼らの「命の歌」に、魂を揺さぶられる。
立っていられないほどだ。
それほどまでに魂を揺さぶられる。
瞑目して彼らの生涯を祈る。
ただただ大自然の華厳に祈る。
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2012:03:29 ≫