<< 雪 山 道 >>
 
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雪が降り続いている。
今期前半は極端に少なかったのだが、
やはり一冬の積雪量というものは、
どこかで帳尻が合うようになっている。
前半に少なければ後半に多いのである。
山道の走破は、もはや難しくなってきている。
なにしろここには除雪車など来ないから、
また延延とスコップ除雪の可能性が出てきた。
この森は酷寒になるので雪質は完全な粉雪である。
そういう雪の時には走破も比較的容易なのだが、
それでも雪が深すぎれば困難になっていく。
稀に湿り雪だった日には、特に要注意である。
車の腹で雪が圧雪されて氷板のようになってしまう。
そうすると、ちょっとやそっとでは出れなくなるのである。
道幅はギリギリなので、どうにもならない。
雪の下に深いワダチが隠れているので、
そこに填まれば脱出は困難となる。
山岳仕様の四駆車であろうが動けなくなる。
極力それを避けて走行するのだが、
雪の中では、そこへと引っ張られてしまう。
そこには傾斜もあるので、落ちていってしまうのだ。
もし落ちたら、即座にバックするしかない。
バックするにしても、両側は雪の壁である。
少しでもハンドルを誤れば、そこでアウトである。
言うなれば、かなり真剣勝負である。
スタックすれば何時間は悪戦苦闘となるのだ。
冬山は日が短い。あっという間に夜になる。
月夜でなければ、辺りは漆黒の闇となる。
余計な燃料を使えないからエンジンを切るのだ。
頭に小さなヘッドランプを着けて作業する。
とにかく脱出しない限りはヒーターで暖も取れない。
ただひたすらスコップを握るしかないのだ。
だから脱出できた時には相当に嬉しい。
三日間この森から出れなくなったこともあったが、
食料も飲料も無かったので雪を食って作業した。
その時の脱出は、ほんとうに嬉しかった。
ここからもっと降りた麓でもスタックする車がいる。
それを見かけた時には、いつも無償レスキューする。
結構喜ばれるのだが、その安堵の気持ちはよく分かる。
それが麓だからまだいいが、
この森の場合には、とにかく誰も入って来れない。
だから自分でしか自分を脱出させられないのである。
だが誰も入って来れないから安心して暮らせる。
犬たちと安心して暮らすには「代償」がつきものである。
 
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2012:01:22 ≫