**≪ 蒼 夜 山 02 ≫**
 
夜中に山を歩く。
独りの場合が多いが、
犬と歩く夜もある。
私と犬は暗黙の了解で、
密やかに蒼い闇の中を進む。
 
昼には昼の輝きがあり、
夜には夜の輝きがある。
山は、昼と夜で、姿を変える。
昼の山も素晴らしいが、
夜の山もまた素晴らしい。
私と犬は蒼い夜を味わう。
闇の中で共感しながら進む。
 
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・・・・ところで・・・・
比叡山の千日回峰行は凄い。
「酒井雄哉:大阿闍梨(大あじゃり)」の映像を観たが、
ただただ感服、ただただ感動であった。
毎日毎日、険しい山道を何十km。
40km・・50km・・60kmと。
その毎日を何年間も続ける。
 そして食事は・・・・
一杯のかけ蕎麦と、
一個か二個のジャガイモと、
一丁のゴマ豆腐。
その献立を日に二回。
 その毎日を、ずっとずっとずっと・・・
これはもう、人間の領域を超えていると思う。
なにしろ、何十kmも山を駆け抜けるのである。
 どんなに腹が減ることか・・・
 たまには、あれこれ食いたいとか・・・
普通ならそういう想いが浮かんで当然だと思うのだ。
だが途轍もなく見事に超克されている御様子である。
不肖自分も、断食絶食はやるのだが、次元が違う。
この自分も粗食だと思うが、粗食の次元が違う。
その食事の御姿を観て涙が出る。
この世の全ての命たちを祈る修行に感涙する。
・・・・・まったく、ただただ、凄いと思う・・・・・
 
そして酒井阿闍梨は、
犬たちと回峰するのであった。
黒犬と白犬と茶犬たちである。
その光景は、なんとも素晴らしい。
これは実に比類の無い光景である。
不思議な感動が湧きあがり、泣けてくる。
阿闍梨と犬たちが、
毎夜毎夜に佛の道を駆け抜けるのだ。
これはもう、未踏の世界だと感じるのだ。
 
後年、黒犬と白犬が他界した。
阿闍梨は二頭の彫像を建てた。
その彫像はあたかも狛犬のように、
僧房を護っているようである。
酒井阿闍梨の胸中は・・・・
あれほどまでに慎ましく・・・
あれほどまでに精進して・・・
そういう生活の中で・・・
愛犬たちがどういう存在だったのか、
誰にでも分かるはずだと思う。
 
≪南無華厳 狼山道院≫
::2011:06:16::