****≪ 狼とアリア ≫****
 
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狼、太郎は、歌を聴くのが好きだった。
とくに、切ないアリアが、とても好きだった。
よく一緒に、アリアを聴いた。
アリアが流れると、
彼はだんだんたまらなくなってくる。
四肢を踏み身をよじらせ、かすかに声をあげ始める。
身体の奥から搾り出すように、かすかな声をあげるのだ。
そうしてとうとうこらえきれずに、ホウルを歌うのだ。
哀切のホウルがアリアと重なり、ハーモニーとなる。
切なく美しい二重唱が、はるかにこだまする。
太郎は肩の高さが、私の腰くらいまであった。
立ち上がると、私よりもはるかに大きかった。
その重厚な巨狼が、アリアに涙して歌うのだった。
射抜くような鋭い眼光が、哀切の光に染まるのだった。
野性の心の奥底の、海より深い感性が、
アリアに涙してホウルを歌う。
22年前のあの日の黄昏。
忘れ得ぬ、狼の純情。
 
今日紹介するアリアは、
プッチーニ作「ジャンニスキッキ:私のお父さん」
 
≪南無華厳 狼山道院≫
::2011:03:10::