≪犬の身体との対話≫
その犬の身体が何を求めているのか。
それを知ることは飼主の勤めである。
獣医に頼るばかりでは何の進歩も無い。
頼るばかりでは常に後手後手に廻ることになる。
本来なら、その犬の身体を一番知るのは、
他の誰よりも飼主本人なのである。
もちろん、専門処置は獣医に任せることになる。
専門領域は優秀な専門家に委ねる以外に無い。
だがそれ以外の日常対処は飼主の領域なのである。
その犬の身体の声を聴く。
「身体の声」というものが、あるのだ。
毎日毎日、深くその犬を見つめていれば、
その声が聴こえてくるのである。
その身体が、どういう状態であるのか。
その身体が、何を求めているのか。
発育期の場合も、成犬体の場合も、
その身体は常に何かを発信しているのである。
食事が足りないのか。
あるいは食事が過剰なのか。
水が足りないのか。
運動が足りないのか。
安眠が足りないのか。
寒いのか。暑いのか。
精神が疲労しているのか。
肉体が疲労しているのか。
何か不安があるのか。
何か葛藤に悩んでいるのか。
心が落ち着けない状況なのか。
どこかを怪我したのか。
身体深部を怪我したのか。
どれほどのダメージなのか。
あるいは内臓が不調なのか。
機能障害が起こっているのか。
などなどなど・・・・・・
深く見つめていれば、
相当な程度まで分かるはずなのである。
その「見る」努力をせずに人に頼るばかりでは、
いつまでたっても「見る力」は高まらないのである。
目の力と輝き。
鼻の湿り気と温度。
唇の内側の温度。
耳の様子。耳の姿勢。
頭の姿勢。首の姿勢。背中の姿勢。
もちろん尻尾の様子。尻尾の力強さ。
挙動。歩き方。走り方。
水の飲み方。食事の食べ方。
などなどなど・・・・・・
つまり、そこに本来の「元気」があるかどうかを、
毎日毎日、注意深く見ていくのである。
そうすれば、異状を迅速に発見できるのである。
そしてその原因も、おおよそ分かるのである。
そしてその対処も、おおよそ分かるのである。
ところで犬は、
本来、自分で食事の量を加減する。
もし摂取過多が続けば、自分で食事量を控える。
運動量が充分ならば、そのような場合は少ないが、
運動量が不充分だと、そのような場合が多くなる。
犬が食わないと心配する飼主が多いと思うが、
犬は自分で食事量を調整する場合もあるのだ。
あるいは、胃腸を休める場合もある。
たまには休めることも必要なのである。
そうやって自分で体調を整えていくのである。
だが普段食欲旺盛な犬が食わなければ、とても心配になるが。
あるいは成長期の頃。
成長には「波」がある。
猛烈な食欲の時期もある。
食欲が落ち着く時期もある。
それは「成長の波」によって変化するのである。
食事量を一律に決め付ける人が多いと思われるが、
その犬の食欲の背景を深く見るべきである。
あるいは「冬モード」に入った時期は、普通は食事量が増える。
冬の手前から、そのモードに入り始める。
身体を耐寒仕様にするために、
下毛を厚くするために、
栄養が必要になるのだ。
あるいは耐寒生活に於いては「カロリー」が必要になる。
身体の中で熱を生み出すために、それが必要となる。
もちろん寒冷地では、それらが顕著になる。
耐寒モードに充分に入ったダブルコートの犬は、
普通は相当な寒気でも平気である。
だが屋内と屋外を頻繁に行き来する犬は要注意である。
身体モードに混乱が生じる危惧があるからだ。
だから行き来する犬の場合には、
屋内犬舎の暖房は切った方がいいと思う。
あるいは低目に設定した方がいい。
そうでないと、多分確実に暑がるはずである。
因みに我が家の犬たちを、たとえば車に乗せた時、
零下10度20度の真冬でも車のヒーターを途中で切る。
そうでないと、犬が暑がってくるからである。
彼らはそれほどに、耐寒モードに入り切っているのである。
なお、「水」は非常に重要である。
水は、単に「水分」と認識する以上に大事である。
水は「代謝」に不可欠の材料である。
水は「発育」に不可欠の材料である。
水は「回復」に不可欠の材料である。
もちろん「水の質」は重大だが、それよりもまず、
犬の傍に「水」があるかどうかが、先決問題である。
たとえば犬は、水が不足すれば順調に発育できない。
あるいはダメージから充分に回復できないのである。
そしてたとえば怪我の時。
まず、水で異物や雑菌を洗浄する。
それだけで飛躍的に回復の助けとなる。
なぜなら身体が異物や雑菌を除去する作業だけでも、
相当な時間とエネルギーを費やすのである。
洗浄によって、その行程が大幅に短縮されるのである。
その患部を洗いにくい場合には、
水の入った大きなバケツを用意して、
タオルに水をたっぷりと含ませながら、
その患部を水タオルで何度か水洗いする。
多くの人は殺菌とか消毒の観念が先立つだろうが、
私の場合には、洗浄の観念が先立つのである。
犬はダメージから回復するために、「禅境」に入る。
冗談かと思われるだろうが、本当の話である。
禅境に入ると、回復力が格段に高まるのである。
体内の回復活動が最高レベルに達するのである。
犬はそれを本能で知っているのである。
だから犬は安静できる場所を探し、
そこでただひたすら禅境に入るのだ。
その時彼らは、余計なことは考えない。
ただただ身体の声と対話しているのである。
そのような時には、
ただじっと見守ってあげることである。
しつこく声を掛けたりしなくていい。
心の声は犬に充分に届いているのだから。
だから主人もまた、心静かに見守るのである。
まだまだ書きたいことは沢山あるが、
延延と続いてしまうので、この辺で筆を置く。
≪南無華厳 狼山道院≫
::2011:02:27::