EVERLAST
その雄のカリブーは、逃げることができた。
いくらでも、逃げ道はあった。
だがなぜ逃げなかったか。
己の力を過信した訳ではない。
熊に闘いを挑んだ訳ではない。
普通なら闘いを選ぶ理由など無いはずだ。
熊に敗れることは、最初から分かっていたはずだ。
最初から分かっていたのに、なぜ闘ったか。
何かの事情で死が近付いていたから、
己の死期を覚っていたから、
それでカリブーは闘ったというのか。
それとも未だ健康体のままだったのか。
何か不可思議な本能の声を聴いたというのか。
その声に、己の使命を感じたのか。
闘いの果てに、その母子熊に身を捧げるつもりでいたのか。
渾身の力で闘った果てに、母子熊を生かそうとしたのか。
それとも、群れを守るために闘ったのか。
群れを逃すために闘ったのか。
それがボスとしての使命だったのか。
昔、アメリカンネイティヴの人から、同じような話を聞いた。
この映像と同じようなドラマを聞いたのだ。
その人は言った。
自然界は不思議なのだ。
途轍もなく不思議で凄い世界なのだと。
理屈で説明なんかできないんだと。
WILDERNESSは、そのくらい凄いんだと。
あるカリブーの最期。
そこにどんな真相があったかは誰にも分からない。
だが彼の果敢な最期は、大自然に永遠に刻まれるだろう。
いや、彼のドラマだけではない。
大自然には、あらゆる命たちのドラマが刻まれている。
大自然は、その無限のドラマの結晶体である。
このカリブーは相当に大きな個体だと思う。
母熊と比較してみれば分かる。
そして雄の大型カリブーの闘争力は尋常では無いのだろう。
母熊の闘い方を見れば分かる。
相手が非力なら、あのような慎重な間合いなど取らないはずだ。
この闘いの間合いと呼吸。
紙一重のギリギリのラインである。
当然である。正真正銘に生死が懸かっているのだ。
そして両者の反射速度。
寸分の狂い無く、絶妙に進退している。
もし人間ならば、この反射は不可能だろう。
そしてカリブーの気力。
メスとは言え、ヒグマの剛力は想像を超えている。
その圧倒的剛力に対して、ああまで耐えたのだ。
ただただ、リスペクトである。
そして子連れの母熊。
子のために、何としてでも仕留めねばならない。
母熊もまた必死だったのだ。
もしカリブーの角が命中すれば、深手を負うのである。
人間なら一撃で宙に舞ってしまうほどの威力なのだ。
だから両者ともに、まさしく渾身の力で闘ったのである。
・・・カリブーのあの最後の突進の時・・・・
彼は分かっていたはずだ。
その一撃が通用しないことを。
だが彼は、己の全存在を賭けた。
ああ・・・
永遠に刻まれたカリブーのドラマ・・・
WILDERNESSの魂に、ただただ祈りを捧げる。
戒香定香解脱香
光明雲台遍法界
供養十方無量佛
見聞普薫證寂滅
普賢行願威神力
普現一切如来前
一身復元刹塵身
一一編礼刹塵佛
於一塵中塵数佛
各処菩薩衆会中
無尽法界塵亦然
深信諸佛皆充満
深念華厳南無華厳
摩訶華厳玄導冥加
≪南無華厳 狼山道院≫
::2011:01:25::
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