<2011年1月15日>
「狼移入構想」というのが話題になっているようだ。
「外国から狼を移入して日本の生態系を回復させよう」
・・・という主旨らしい。
特に「森の植物の、鹿による食害が酷い」ので、
狼に鹿を捕食させて食害を食い止めようとするものらしい。
狼を山野に放ち、草食獣の過剰増加を防ごうということだ。
そしてその構想を実現するために、
「狼は危険な猛獣ではありません」と、世間にアピールしているようである。
その構想サークルのメンバーは、学者とか狼ファンたちのようである。
※因みに北海道狼も本州狼も、ほぼ百年前に絶滅したようである。
意図は分かるが、疑問と心配が大きい。
今の日本の世間意識を考えてみれば危惧は当然なのである。
それは皆さんが一番分かっていることのはずである。
これまでの数数のニュースを思い起こせば一目瞭然のはずである。
小熊が里に降りただけで大騒ぎして抹殺を要請するのである。
猪を見かけただけで敵意剥き出しにする世間なのである。
山に野犬がいただけで駆除を要請する世間なのである。
里に犬が放れていただけで過剰反応する世間なのである。
ネットを見れば、山獣に対して世間が如何に冷酷かが一目瞭然である。
世間の「防衛意識」は分かるが、それが過剰になれば敵意となる。
もはや山の動物たちは、人間からの敵意を察知している。
だいいち、自分の飼犬のことさえ理解できない人が多いのに。
理解できずに飼育放棄する人が星の数ほどいるというのに。
最も身近な犬という動物さえも理解できないのだから、
その人たちが山の動物など理解しようが無いのである。
「ペットと山獣は違う」と言うかも知れないが、
その理解に於いての「根本」は全く一緒なのである。
これだけ「ペット問題」が山積みの世間である。
ペット動物とも共生できないのに、なんで山獣と共生できようか。
狼移入構想の人たちは、
この今の世間意識についてどう思っているのだろうか??
この世間意識を根本的に考えたことがあるのだろうか??
もし狼が移入されたとしたら、いずれ必ず軋轢が起こってくるだろう。
もし狼の姿を目にすれば、いずれ人人は迫害意識を持つようになるだろう。
そしていつの日か、世間に駆除要請の意識が広がる可能性もある。
世間が、野性に対しての理解を持っているなら話は変わるが。
世間が、よほど山の動物たちを愛しているなら話は変わるが。
しかし今の世間を見てみれば、それとは真逆の実態なのである。
それとも構想者たちは、この世間意識を知ってのことか??
知った上で、移入を実現させようとしているのか??
もしかしたら「狼側の、ある程度の犠牲」を承知の上なのか??
もしかしたら「狼側の犠牲」など、なんとも思っていないのか??
学者や研究者の中には、
学術成果・研究成果のためには「非情」になれる人もいるらしい。
狼移入構想の人たちが、そのような非情な意識で無いことを祈るが。
狼は確かに人間の気配を嫌うし、人間を避けて生きるはずだ。
だが絶対に人里に近付かないとは言い切れない。
そこにどんな事情が生まれるかも知れないのだ。
狼は「犬」とは異次元の動物である。
狼を、「犬と似たような動物」だと思い込んでいる人が多いようだが。
「犬をちょっと野性的にした程度」だと思っている人が多いようだが。
狼の実力を、「犬を敏捷にした程度」に思っている人が多いようだが。
実際の狼は、すでに「気配」が犬とは別次元である。
狼を知らない人でも、もし山で遭遇すれば、犬とは違う動物だと直感するだろう。
狼は普通は人間の気配を嫌うから、滅多に出会う機会は無いだろうが。
だがもし何かの事情で狼と遭遇した時、人間は冷静に自然体でいられるか??
里に帰ってから「狼に出会ったよ!!」の土産話で済ますことができるか??
この世間が、土産話で済ませる人たちだけなら、何の問題も無いだろうが。
「怖かった!!役場に何とかしてもらおう!!」という人が増えれば事態は大きくなる。
ところで山の野犬は殆どいなくなったという。
狼には及ばずとも、野犬が代役を果たしていたという説もあるのだが。
野犬が多少なりとも、生態系の秩序に貢献していたという説もあるのだ。
だが野犬たちはもはや殆ど消滅したらしい。
おそらく長年に亘る「山犬狩り」の結果なのだろう。
野犬でさえ、人間にとっては目障りだったのだ。
野犬でさえも世間にとっては脅威であったということだ。
それが「狼」であれば、世間はいったいどう見るであろうか。
そして「家畜」は、狼にとって格好の食糧に映るだろう。
狼が里の牧場に近付くか近付かないかは、誰にも分からない。
だが狼を移入したとして、もし家畜が食われたとしたら、どうなるのか??
牧場主は寛大に赦してくれるのか??
そして狼移入実行者が被害補償をするのだろうか??
世間も実行者も、そこまで覚悟が決まっているのだろうか??
いい加減な覚悟で狼を移入すれば、結局は狼迫害意識を生むだけである。
因みに、米国「イエローストーン」の狼移入例では、家畜被害が出ている。
あの広大なイエローストーンでさえ・・・獲物も豊富だったはずなのに・・・
それで当地では、「狼補償基金」が生まれたようである。
牧場に被害が出れば、自然保護団体が補償してくれるようである。
だとしたら、当然日本でも、予め基金の設立が必要になるだろう。
その基金設立の話は進んでいるのだろうか??
ところで、今の日本は狼にとっては狭いと思う。
なにしろ自然は、道一本で分断されてしまうのだ。
広いと思っていても、道一本あるだけで、分割されているのである。
それを考えると、今の日本の山野は非常に狭いと思うのだ。
狼がその気になれば、一晩で200kmくらいは走破してしまう。
そういう狼にとって、日本の山野は充分な広さを持つのだろうか。
あるいは日本の気候は、移入狼にとって適しているのか??
移入狼は日本特有の湿気と暑さに喘ぐのではないか??
冷気を求めて、北へ北へ移動する可能性もあると思うのだが。
今の日本の山の動物たちは、狼を全く知らない。
今の動物たちにとっては、狼は未知の存在なのである。
しかし彼らには、狼の実力が分かる。直感で分かるのだ。
だから彼らは、長い期間に亘り、不安に陥るだろう。
黒熊も、狼を怖れるだろう。そして不安の毎日を送るだろう。
黒熊の胸中を想うと、とても心配になる。
私は狼を愛しているが、熊も愛しているからだ。
山全体が、かなり長い間、緊張に包まれるだろう。
狼は「危険な猛獣」では無いにしろ、紛れも無く猛獣なのである。
「猛獣」という意味を悪く解釈する人が多いが、悪い意味など無い。
猛獣とはつまり、「並並ならぬ実力者」の意味なのである。
勇猛果敢な「熊猟犬」は、熊には脅えないが「狼には脅えた」と言われる。
犬は古来より、狼の気配を怖れると言われてきたのである。
実は犬は、狼の「食糧リスト」に入っているのである。
もし犬が山に彷徨えば、高い確率で狼の食糧となるだろう。
それを考えれば、狼が犬の同族では無いと分かるはずだ。
だから本能的に、犬は狼を怖れる。たとえどんな猛犬であっても。
※我が家族には、狼と犬たちがいた。
狼と犬たちは家族であったが、しかし犬たちは狼が「狼」であることを知っていた。
狼が自分とは異種族であることを知っていたし、狼が猛獣であることを知っていた。
彼らはまったく「家族」であったが、しかし本能で互いを知り抜いていたのである。
彼らはそれを知りながら、家族の絆で生きたのである。
もちろん家長の私が、いかなる時でも細心の注意を払ったのは言うまでも無い。
狼ファンが、日本の山野に狼を呼び戻したい気持ちは分かる。
だがもし本当に狼を愛しているのなら、移入を願う以前に、
今の世間に潜む「野性敵視」の意識をなんとかすべきである。
今の世間は、野性を理解できない人の方が圧倒的大多数なのである。
そして狼だけでなく、ほかの山獣たちのことも想って欲しい。
たとえば熊や猪が迫害される事態に対しても行動を起こして欲しい。
食糧不足で成長もできなかった小熊を冷酷処分する世間に対して、
狼ファンたちはどのような感想を持っただろうか・・・・・
狼は、普段は天使である。
狼は、無駄な闘いなどしない。
狼は、普段は実に静かで穏やかである。
狼は愛情深く、そして繊細な感性の持ち主である。
狼の家族は、深い深い絆で結ばれている。
だがもし狼が本気を出せば、狼は壮絶な闘士となる。
天使の狼と猛獣の狼。そのどちらもが「狼」なのである。
どちらか片方だけでは、狼は語れない・・・・・
■南無華厳 狼山道院■
「狼移入構想」というのが話題になっているようだ。
「外国から狼を移入して日本の生態系を回復させよう」
・・・という主旨らしい。
特に「森の植物の、鹿による食害が酷い」ので、
狼に鹿を捕食させて食害を食い止めようとするものらしい。
狼を山野に放ち、草食獣の過剰増加を防ごうということだ。
そしてその構想を実現するために、
「狼は危険な猛獣ではありません」と、世間にアピールしているようである。
その構想サークルのメンバーは、学者とか狼ファンたちのようである。
※因みに北海道狼も本州狼も、ほぼ百年前に絶滅したようである。
意図は分かるが、疑問と心配が大きい。
今の日本の世間意識を考えてみれば危惧は当然なのである。
それは皆さんが一番分かっていることのはずである。
これまでの数数のニュースを思い起こせば一目瞭然のはずである。
小熊が里に降りただけで大騒ぎして抹殺を要請するのである。
猪を見かけただけで敵意剥き出しにする世間なのである。
山に野犬がいただけで駆除を要請する世間なのである。
里に犬が放れていただけで過剰反応する世間なのである。
ネットを見れば、山獣に対して世間が如何に冷酷かが一目瞭然である。
世間の「防衛意識」は分かるが、それが過剰になれば敵意となる。
もはや山の動物たちは、人間からの敵意を察知している。
だいいち、自分の飼犬のことさえ理解できない人が多いのに。
理解できずに飼育放棄する人が星の数ほどいるというのに。
最も身近な犬という動物さえも理解できないのだから、
その人たちが山の動物など理解しようが無いのである。
「ペットと山獣は違う」と言うかも知れないが、
その理解に於いての「根本」は全く一緒なのである。
これだけ「ペット問題」が山積みの世間である。
ペット動物とも共生できないのに、なんで山獣と共生できようか。
狼移入構想の人たちは、
この今の世間意識についてどう思っているのだろうか??
この世間意識を根本的に考えたことがあるのだろうか??
もし狼が移入されたとしたら、いずれ必ず軋轢が起こってくるだろう。
もし狼の姿を目にすれば、いずれ人人は迫害意識を持つようになるだろう。
そしていつの日か、世間に駆除要請の意識が広がる可能性もある。
世間が、野性に対しての理解を持っているなら話は変わるが。
世間が、よほど山の動物たちを愛しているなら話は変わるが。
しかし今の世間を見てみれば、それとは真逆の実態なのである。
それとも構想者たちは、この世間意識を知ってのことか??
知った上で、移入を実現させようとしているのか??
もしかしたら「狼側の、ある程度の犠牲」を承知の上なのか??
もしかしたら「狼側の犠牲」など、なんとも思っていないのか??
学者や研究者の中には、
学術成果・研究成果のためには「非情」になれる人もいるらしい。
狼移入構想の人たちが、そのような非情な意識で無いことを祈るが。
狼は確かに人間の気配を嫌うし、人間を避けて生きるはずだ。
だが絶対に人里に近付かないとは言い切れない。
そこにどんな事情が生まれるかも知れないのだ。
狼は「犬」とは異次元の動物である。
狼を、「犬と似たような動物」だと思い込んでいる人が多いようだが。
「犬をちょっと野性的にした程度」だと思っている人が多いようだが。
狼の実力を、「犬を敏捷にした程度」に思っている人が多いようだが。
実際の狼は、すでに「気配」が犬とは別次元である。
狼を知らない人でも、もし山で遭遇すれば、犬とは違う動物だと直感するだろう。
狼は普通は人間の気配を嫌うから、滅多に出会う機会は無いだろうが。
だがもし何かの事情で狼と遭遇した時、人間は冷静に自然体でいられるか??
里に帰ってから「狼に出会ったよ!!」の土産話で済ますことができるか??
この世間が、土産話で済ませる人たちだけなら、何の問題も無いだろうが。
「怖かった!!役場に何とかしてもらおう!!」という人が増えれば事態は大きくなる。
ところで山の野犬は殆どいなくなったという。
狼には及ばずとも、野犬が代役を果たしていたという説もあるのだが。
野犬が多少なりとも、生態系の秩序に貢献していたという説もあるのだ。
だが野犬たちはもはや殆ど消滅したらしい。
おそらく長年に亘る「山犬狩り」の結果なのだろう。
野犬でさえ、人間にとっては目障りだったのだ。
野犬でさえも世間にとっては脅威であったということだ。
それが「狼」であれば、世間はいったいどう見るであろうか。
そして「家畜」は、狼にとって格好の食糧に映るだろう。
狼が里の牧場に近付くか近付かないかは、誰にも分からない。
だが狼を移入したとして、もし家畜が食われたとしたら、どうなるのか??
牧場主は寛大に赦してくれるのか??
そして狼移入実行者が被害補償をするのだろうか??
世間も実行者も、そこまで覚悟が決まっているのだろうか??
いい加減な覚悟で狼を移入すれば、結局は狼迫害意識を生むだけである。
因みに、米国「イエローストーン」の狼移入例では、家畜被害が出ている。
あの広大なイエローストーンでさえ・・・獲物も豊富だったはずなのに・・・
それで当地では、「狼補償基金」が生まれたようである。
牧場に被害が出れば、自然保護団体が補償してくれるようである。
だとしたら、当然日本でも、予め基金の設立が必要になるだろう。
その基金設立の話は進んでいるのだろうか??
ところで、今の日本は狼にとっては狭いと思う。
なにしろ自然は、道一本で分断されてしまうのだ。
広いと思っていても、道一本あるだけで、分割されているのである。
それを考えると、今の日本の山野は非常に狭いと思うのだ。
狼がその気になれば、一晩で200kmくらいは走破してしまう。
そういう狼にとって、日本の山野は充分な広さを持つのだろうか。
あるいは日本の気候は、移入狼にとって適しているのか??
移入狼は日本特有の湿気と暑さに喘ぐのではないか??
冷気を求めて、北へ北へ移動する可能性もあると思うのだが。
今の日本の山の動物たちは、狼を全く知らない。
今の動物たちにとっては、狼は未知の存在なのである。
しかし彼らには、狼の実力が分かる。直感で分かるのだ。
だから彼らは、長い期間に亘り、不安に陥るだろう。
黒熊も、狼を怖れるだろう。そして不安の毎日を送るだろう。
黒熊の胸中を想うと、とても心配になる。
私は狼を愛しているが、熊も愛しているからだ。
山全体が、かなり長い間、緊張に包まれるだろう。
狼は「危険な猛獣」では無いにしろ、紛れも無く猛獣なのである。
「猛獣」という意味を悪く解釈する人が多いが、悪い意味など無い。
猛獣とはつまり、「並並ならぬ実力者」の意味なのである。
勇猛果敢な「熊猟犬」は、熊には脅えないが「狼には脅えた」と言われる。
犬は古来より、狼の気配を怖れると言われてきたのである。
実は犬は、狼の「食糧リスト」に入っているのである。
もし犬が山に彷徨えば、高い確率で狼の食糧となるだろう。
それを考えれば、狼が犬の同族では無いと分かるはずだ。
だから本能的に、犬は狼を怖れる。たとえどんな猛犬であっても。
※我が家族には、狼と犬たちがいた。
狼と犬たちは家族であったが、しかし犬たちは狼が「狼」であることを知っていた。
狼が自分とは異種族であることを知っていたし、狼が猛獣であることを知っていた。
彼らはまったく「家族」であったが、しかし本能で互いを知り抜いていたのである。
彼らはそれを知りながら、家族の絆で生きたのである。
もちろん家長の私が、いかなる時でも細心の注意を払ったのは言うまでも無い。
狼ファンが、日本の山野に狼を呼び戻したい気持ちは分かる。
だがもし本当に狼を愛しているのなら、移入を願う以前に、
今の世間に潜む「野性敵視」の意識をなんとかすべきである。
今の世間は、野性を理解できない人の方が圧倒的大多数なのである。
そして狼だけでなく、ほかの山獣たちのことも想って欲しい。
たとえば熊や猪が迫害される事態に対しても行動を起こして欲しい。
食糧不足で成長もできなかった小熊を冷酷処分する世間に対して、
狼ファンたちはどのような感想を持っただろうか・・・・・
狼は、普段は天使である。
狼は、無駄な闘いなどしない。
狼は、普段は実に静かで穏やかである。
狼は愛情深く、そして繊細な感性の持ち主である。
狼の家族は、深い深い絆で結ばれている。
だがもし狼が本気を出せば、狼は壮絶な闘士となる。
天使の狼と猛獣の狼。そのどちらもが「狼」なのである。
どちらか片方だけでは、狼は語れない・・・・・
■南無華厳 狼山道院■