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<2010年4月16日>

14歳の「蓮」が、この森の厳冬を乗り越えた。

老境で短毛の彼が、零下20度を乗り越えた。

<今日も雪が降り続いているが、もはや冬の寒気には及ばない>

14歳といえば超高齢だ。

骨量の重い中型なので、人間でいえば90歳を超えていると思う。

蓮は、ほんとうに頑張った。

彼のその姿を、この胸に刻む。


だが、めっきりと筋肉が落ちた。

頑丈な体格だったのに、この一年で随分と痩せた。

食欲は相変わらず旺盛なのに、筋肉が落ちていく。

13歳までは、まだ往年の姿を残していた。

だがこの一年で、急激に老けた。


彼の顔つきが変わってきた。

以前の記事にも書いたが、蓮は慈愛に溢れた犬だ。

実にやさしい眼差しをしている。

だがさらに、何か特別の情感が彼の顔に現われてきた。

ほかの犬たちを世話していると、

じっと、まるで仏のように慈悲に満ちた表情で私を見つめている。

微笑みながら、ずっとずっと見つめ続けてくれるのだ。

※因みに彼の精神が眠っている訳ではない。その精神は元気に活動している。


蓮のそばに、仏が来ている。

いつもそれを感じている。

そのような経験は、これまでもしてきた。

ほかのみんなのときも、いつも経験してきた。

だから複雑な心境になる。

命の旅の、これは一場面だと分かっているが、それでも切なく、寂しい・・・・


私は蓮に、頑張って!!などとは言えない。

私は蓮に、少しでも長生きして!!などとは言えない。

彼を、この世に引っ張り込んでおくことなど、私にはできない。

彼の寿命は、彼のものだ。

私のものでも誰のものでもない。

彼の寿命は、彼の本能が決める。

彼の本能の一番深いところが決める。

大自然の聖なる教典、本能の導きによって、彼が自分で決めるのだ。

私にできることは、彼の心の言葉を聴くことだけだ。

この世にとどまるか、この世を去って次の旅に向かうか、それを聴くのだ。

彼は、いつでも全身全霊で生きてきた。

そして今も、全身全霊で生きている。

この世での最後まで、彼はそのように生きる。

その果てに、彼は新たな旅に向かう。

彼には、そのように重大な事情がある。

だから私は、この世に彼を引っ張り続けておくことなどできない。

私はただ、一心に彼の心の言葉を聴いている・・・・


18歳で他界した次郎も、16歳で他界したハンも、

13歳でこの世を去ったルウもロウもオーランたちも、

そしてライも太郎も夕月たちも、すべてのみんなが教えてくれた。

その別れの間際に、命の旅のことを、教えてくれた。

その命のすべてで、教えてくれた。


蓮、おまえと最後まで、一緒に生きる。

おまえの勇姿を、この目に焼き付けるのだ。

■南無華厳 狼山道院■