<2009年6月30日>

犬たちの世話が終わり、

みんなの犬舎の前で座る。

ひととき、夜の森の静寂を味わう。

犬たちは、じっと私を見つめている。

私は夜空を仰いで、彼らの名前を呼ぶ。

ひとりひとりの名を、声高らかに呼ぶ。

そら君を呼ぶ。

「そーらー・・・そーらーくん!!!」

「そーらーくーん!!!」

そら君が、激しく尻尾を振る。

みんなが真顔になり、瞳が輝く。

どう君を呼ぶ。

「どーお・・・どーおーくーん!!!」

どう君が、激しく尻尾を振る。

そうして、ひとりひとりの名を夜空に叫ぶ。

みんなは、だんだんたまらなくなってくる。

ひゅんひゅん・・・ひゅーんひゅーん・・・

おおおう・・・おおおおう・・・・

みんなの名を呼び終えると、彼らのホウルが始まる。

彼らはホウルの歌で、私に応えてくれる・・・・


名前は、とても大切だ。

犬たちは、名を呼ばれることをとても喜ぶ。

彼らは、その名が、自分自身であることを知っているのだ。

だからいつも、心を込めて名付けた。

今まで、たくさんたくさんの家族がいたが、

もちろんひとりひとり、すべて違う名前だ。

その子のための、その子だけの名前・・・

かけがえのない、唯一無二の個性だから。

その子は、この世に唯ひとつの命だから。

だから心を込めて名付ける・・・・


紅葉の季節になれば、「かえで」を想い出す。

真っ赤な楓の木の下で、ひとり泣く。

夜空に稲妻が走れば、「ライ・・雷」を想い出す。

嵐の晩には、「オーラン・・王嵐」を想い出す。

いろんなときに、つぎつぎとみんなを想い出す。

いつもみんなの名前を想い出す。


野生界のみんなにも、きっと名がある。

きっとそれぞれに、立派な立派な名前があるはずだ。

お母さんが、心を込めて名付けるのだ。

お母さんが、心の中で、その子だけの名を呼んでいるのだ。

兄妹たちに、それぞれに違うニュアンスの波動を送っているだろう。

その微妙に違うニュアンスのパルスは、すなわち独自の名前だと感じる。

言語の名前ではないけれど、きっと立派な名前なのだ・・・・


朝、森で出逢った小さな野ネズミさん・・・

君の名は、なんて言うんだい??

きっと素敵な名前に違いない・・・・

■南無華厳 狼山道院■