イメージ 1

<2008年4月28日>

今日は、狼「太郎」の命日だ。

4月28日に我が家族となり、4月28日にこの世を去った。

太郎の最後のホウルが、今も聴こえる。

もはや一滴の力も残っていない身体で、彼は渾身の別れの歌を歌ってくれた。

力に満ちた勇壮なホウルが、森の空気を震わせた。

辺りのすべてを圧倒するあの「狼の歌」を、最期に歌ってくれたのだ。

「お父さん!! お父さん!!!」

森のはずれで作業していた私は、その瞬間に、彼の最期を覚った。

「太郎!!!」 辺りが真っ白になった。

「太郎!!!」 我を忘れて、無我夢中で走った。

そこに、力尽きた太郎の姿があった。

「太郎!! 太郎!!!」 声を限りに、太郎の名を叫んだ。

立ち尽くした。 ずっと、立ち尽くしていた。

太郎を抱き締め、目を閉じた。 彼のすべてが、次々と心に蘇る。

彼が生後23日で我が家族となった日の夜、赤ちゃんの彼が、母狼への別れの歌を歌った。

夜中、太郎は部屋を出て夜空の見える廊下に立ち、蒼穹を仰いで勇壮なホウルを歌った。

未練の慕情の哀歌ではない。 最愛の母との、「別れの覚悟」の歌だった。

赤ちゃんの声とは信じられない重い声量で、別れの覚悟のホウルを歌ったのだ。

蒼い闇の空気を震わせて、子狼のホウルが響き渡る。

とてつもない衝撃が心を貫いた。

「これが狼か!! これが狼なのか!!!」

彼の後姿を見守りながら、私は立っていられないほどの衝撃を受けた。

悲しくない訳がない!! どんなに悲しいか!! まだ乳飲み子の赤ちゃんなのだ!!!

それなのに・・・それなのに・・・・

「狼の誇り!! 狼の誇り!!!」 心の中に、呪文のようにその言葉が繰り返される。

私は誓った。 彼を裏切らないことを。 どんなことがあっても、家族でいることを。

たとえ何が起ころうとも彼の父であり続けることを、この胸に誓った。

そして最期の時、太郎は、この私に、渾身の別れのホウルを歌ってくれた。


あの歌を忘れない。

あの歌が、いつも私を支えてくれた。

猛き純情の歌を、狼の誇りの歌を、この胸に刻んで乗り越えてきた。

苦しいとき、絶望のとき、いつもあの歌が聴こえる。

私はいつも、あの歌で我に返るのだ。 我に返り、私は自問する。

「お前、それでも太郎の父か?? お前、情けないぞ!!!」

太郎から学んだ不屈の闘志を忘れかける時、その声が胸に響き渡る。

*** S P I R I T OF THE W I L D !!! ***

「お前、忘れるな!! お前、忘れてはならない!!」

太郎の顔が浮かぶ。 みんなの顔が浮かぶ。

私を父と信じてくれたみんなの顔が、私に愛を捧げてくれたみんなの顔が心に浮かぶ。


S P I R I T OF THE W I L D !!!

野性たちを見るがいい。

いかに飢えようとも、いかに疲れ果てようとも、

いかに孤独の中にいようとも、いかに不安の中にいようとも、

酷寒の中で、吹雪の中で、何日も何日も峰峰を越えて進み続ける。

生き抜くために!! 生きる使命のために!! 己の心に響く偉大な声に応えるために!!


太郎、お前の心を、お前のスピリットを、忘れない!!

**** WOLFTEMPLE ****