<2008年3月13日>

「蓮光犬ロータスグレイス」。

「餓死する犬」としてギャラリーに展示された犬。

針金に縛られて、人々の嘲笑の中で飢えの果てに死んだ犬。

お前は俺たちのために、いばらの道を歩んだ。

誰も想像できない地獄に身を投げた。

誰も真似できない沈黙の抗議を果たした。

俺たちのために。

全世界の動物たちのために。

大自然界の全ての命のために。


大自然界に、レクイエムが流れている。

悲しく荘厳なレクイエムが奏でられている。

みんな聴いている。

大自然界のみんなが、このレクイエムを聴いている。

みんなが祈りの中にいる。

俺たちのみんなが、祈りの中にいる。

忘れはしない。

俺たちは忘れはしない。

お前の最期の叫びを。

お前の魂の一番深くからあがる悲痛の叫びを。

地獄の魔物の群れに囲まれて、笑いの中で身を焼かれたお前の苦悶の叫びを。


お前は俺たちの代わりにその生贄の儀式に行った。

お前は知っていた。

連れ去られる時からお前は知っていた。

その魔物が許すことを知らない怪物であることを。

その魔物が命の苦しみを見て恍惚に浸る怪物であることを。

その魔物が恍惚に浸る果てに更なる怪物に変貌していくことを。

その魔物がこの世の調和からの逸脱者であることを。

その魔物がこの世の調和の掟を破る無法者であることを。

その魔物が聞く耳を持たないことを。

その魔物が一切を無視して暴虐の限りを尽くして生きて来たことを。

俺たちは知っている。

その時のお前の恐怖を。

その時のお前の絶望を。

その時のお前の悲しみを。

その時のお前の苦しみを。

俺たちは知っている。

この儀式の意味を。

この儀式が魔物たちの宣言であることを。

魔物たちがこの世の偉大な調和に永遠に訣別した宣言であることを。

俺たちは聞いた。

その魔物の宣言の声を。

俺たちは見た。

暴力と欲望に狂った真っ赤な魔物の目を。

俺たちは思い知った。

この魔物が誰の話も聞かないことを。

この魔物が、「偉大な愛」が語る言葉にも耳を傾けずに暴力支配を続けていくことを。


だがこの魔物は、自分の正体を知らない。

自分の正体に気付かずに、どこまでも正義を気取っている。

一体、この勘違いはどこから来るというのだ。

己を見つめる目を持たないのか??

己を見つめる目を失ってしまったのか??

魔物は、鏡に映る自分の姿が見えないのだ。

だから自分がどれほど凶暴な怪物であるかが分からない。

大自然界の誰もがその姿を知っているというのに!!


「偉大な愛」でさえ、この魔物には手を焼いている。

未だかつて無い、未知の怪物だからだ。

未だかつて無いほどに常軌を逸した暴走者であるからだ。

だから偉大な愛でさえ、この魔物の正体を掴むことが困難だった。

だが偉大な愛は、ついに知った。

蓮光犬ロータスグレイスの非業の死の姿が、すべてを明らかにしたのだ。

その名は偉大な愛の世界に、永遠に刻まれるだろう。

**** WOLFTEMPLE ****