<2008年2月25日>

狼の山に、夜が来る。

月が、輝いている。

雪に覆われた森が、蒼白く照らされる。

家族たちの前に、座る。

気温はすでに、零下15度だ。

みんな、沈黙のなかで、夜を味わっている。

夜にしか来ない独特の世界を味わっているのだ。


声は、出さない。

言葉をかけなくとも、心は通じ合っている。

蒼い闇のなかで、みんなの心が、ひとつになる。


「今日は、楽しかったね。雪のなかを、一杯一杯、走ったね。

今日もいろんな匂いがしたね。キツネさんも来ていたね。カモシカさんも来ていたね。

もっともっと遠くまで走りたかったね。でも、途中で引き返してくたね。

お父さんのことを想って、引き返してくれたね。ありがとう。ほんとうに・・・」

無言のなかで、みんなが起きている。

私の心の声を、聴いているのだ。


悍と小太が、森のかなたに顔を向けた。

遠くに、なにかの気配を感じたのだ。

彼らに続き、みんながその方向を注目する。

私も耳を澄ます。 だが私には分からない。

私の感覚など、彼らの超感覚の足元にも及ばないのだ。

しばらくのあいだ、彼らの注目は続いた。

全感覚を注ぐその真剣な姿は、とても美しい。

私はいつも、その姿を見つめている。


夜が深まった。 気温はさらに下がる。

聖なる寒気が、森を包む。

今日も無事に一日が終わる。 ありがたいことだ。

我々はいつもギリギリの境界に生きているから、

生き延びられるだけでも、ありがたい。

明日も、力の限りに生きよう!!

みんなで一緒に、乗り越えていくのだ。

**** WOLFTEMPLE ****