<2008年2月15日>

「01」から続く:

ロウの極度の警戒心は実に複雑な要素から成り立っている。

彼は臆病なのではない。これは「弱気の警戒心」とは違うのだ。

おそらく、大変な状況を過ごしてきたのだろう。

幼い彼は、必死になって何かと闘ってきたのだろう。

多分、生死に関わるほどの環境だったのだろう。

私は、「時間」が必要なことが分かっていた。

「プロセス」が不可欠なことを分かっていた。

だから焦るつもりは無かった。焦りは禁物なのだ!!

だが、「ロウが本来の姿に戻ることは不可能かもしれない・・」とも思った。

可能性は50%だと感じた。

だが、たとえ無理だとしても、彼は我が家族だ。

たとえ何が起ころうとも、ロウは終生の家族なのだ。

たとえ彼がこのまま私に懐かなくとも、そんなことはどうでもいいことだ。

そんなことには関係なく、彼は私の最愛の家族なのだ!!


私が部屋の中心に座る。

ロウが周囲を延々と爆走する。

それが何ヶ月も続いた。

私はただ静かに座っているだけだ。指一本動かさない。

しかしこの状況が、避けては通れない重大な過程なのだ。

彼は烈しい跳躍をするので、窓のガラスが割れるのは目に見えているので、

家中の窓ガラスを外して「鉄格子」に変えた。

家の中が、外気温と変わらなくなった。

ここは真冬には零下20度を記録するが、しかたのないことだった。


ロウを引き取る3ヶ月ほど前に、「ルウ」と名付けた子犬を保護した。

ルウは生後2ヶ月くらいの捨て犬だった。

ルウも家の中で暮らしていた。

ロウが来た日、ルウを対面させた。

ルウは一切のちゅうちょ無く、一直線にロウに駆け寄った。

そしてやさしくロウの口元を舐めた。

その瞬間、まさにその瞬間、ロウの顔が変わった。

あれほど険しかった顔が、一瞬に笑顔に変わったのだ!!

それは凄い瞬間だった。感動の瞬間だった。

ルウは、とてもとてもやさしい子だったのだ。

部屋に遊びに来る「野ネズミ」とも友達になるほどに、やさしいのだ。

その時の光景を、15年たった今でも忘れない。

それは種を超えた兄弟の愛の始まりだった。


ロウとルウはどんどん仲良しになっていく。

彼らの間には壁が無い。

私とロウも、対話はしている。

ロウは私の心を分かっているが、だが、人間の私への警戒心は解けないのだ。

分かっていながら、それでも心は解けないのだ。

野性たちにとって、それほどに人間は特殊な存在なのだ!!

因みに狼の子は、生後3週間を境に周囲を識別する。

自分にとっての関係性を識別するのだ。

狼の太郎は生後23日で我が家族となったが、すでにその日齢で、強固な意志を持っていた。

まだ授乳期でありながら、すでにその日齢で、太郎は狼そのものだったのだ。

それらを考えると、ロウの場合は時期的に遅かったとも言える。

狼犬とはいえ、ロウは血統的には殆ど狼なのだ。

しかも生い立ちが過酷であったなら、なおさらに困難になる。

だが、焦りも迷いも無かった。

ロウを愛する、ただそれだけが私の務めだった。

ロウが懐くことは、それは「結果」に過ぎない。

ロウの父として、ただひたすらに愛すること、それしかないのだ。

※続きは後ほど書きます。お待ちください。