
クドリャフカに捧げる挽歌::
11月9日。
この日、私は祈りを捧げる。
小さな可愛い女の子の命日だからだ。
その子はとても賢く、とても忍耐強い子だった。
しかしそれが、その子の運命を変えた。
その子はたったひとりで宇宙に行って、帰らぬ命となったのだ。
その子の名を「クドリャフカ」という。
1957年11月3日、人工衛星に生態データ収集目的の実験動物として、その子は乗せられた。
狭い狭い密室に閉じ込められ、身体を縛られ、計測器とつながれ、
そして喉にはチューブを差し込まれた状態で打ち上げられた。
それは7日間の死出の旅路だった。
どれほどの孤独と苦しみだったかは、誰でも想像がつくはずだ。
打ち上げの時の衝撃を、どんな思いで受け止めていたかと思うと、胸が張り裂けそうになる。
わずかな身動きもとれずに、たったひとりで、途方もない不安に耐えていたのだ。
やがて、さらに苦しみが増す。
酸素は足りなくなり、飛行服の内部が異常な高温になっていく。
「チューブからの睡眠薬入りの毒物で安楽死した」と発表されたが、
それまでの苦しみは、言語を絶するものだったはずだ。
その子にとって、果てしなく長い7日間だった。
死よりも辛い7日間だった。
こうして、疑いも偽りも憎しみも持たない純真無垢の命が、黒焦げの死を迎えた。
誰からも感謝されることなく、誰からの祈りもなく、たったひとりで。
私は祈る。
小さな可愛い、勇気と忍耐に満ちた偉大な女の子に、この一心を捧げる。
クドリャフカ、最後の最後まで全霊で生きた小犬。
孤独と絶望にたったひとりで立ち向かった小犬。
私は忘れない、君の名を。
私は忘れない、君の勇気を。
11月9日、私は渾身のレクイエムを歌う。
人間はいつも、他の種族を犠牲に選んできた。
自分たちは代償を払わずに、他の命を生贄の池に放り込んできた。
祈りもなく、感謝もなく、当然のごとくに平然と。
**** WOLFTEMPLE ****