

森に冬が訪れた。
何もかも、たちまち凍っていく。
年が明けたが、それは本格的な冬の到来を意味する。
標高1300mのこの森は、日中でも気温はマイナスだ。
ひたすら氷点下の世界なのだ。
だが犬たちは元気だ。本当に頭が下がる。
彼らとて、酷寒が心地よい訳ではない。
しかし一切愚痴をもらさない。弱音を吐かない。
どうやって乗り越えるか、それだけに専心するのだ。
厳しい寒気は体力の消耗が激しい。気力の消耗も激しい。
そこでは、己の力が試されるのだ。
冬の森に立っていると、野生動物たちのことが気にかかる。
つくづく、彼らは本当に大変だと思う。
食べ物はあるのだろうか?
食べなければ身体は温まらない。
飢えは、凍死を意味するのだ。
極限の空腹と寒さの中で孤独に死ぬのだ。
野性たちの精神力は輝いている。
どこまでも澄んだ純粋な生命力に満ちている。
誰に誇る訳でもない。誰に見せる訳でもない。
彼らは、ただただ全身全霊で生きている。
人間には、彼らの生き様が分からないかも知れない。
彼らの「全身全霊」の意味が分からないかも知れない。
彼らの純情が、彼らの忍耐が、彼らの使命感が、分からないかも知れない。
彼らは、己のことで悩んでいる暇など無い。
偉大な調和のメンバーとして、厳しき調和のメンバーとして、美しき調和のメンバーとして、
物凄いスピードで一瞬一瞬に変化を遂げる深秘の調和のメンバーとして、
この今に、この瞬間に、命の炎を燃やし尽くしているのだ。
例えば一頭の鹿が、例えば一頭の熊が、例えば一頭の猪が、例えば一頭の狼が、
それぞれに、力の限りを尽くして生きている。
それぞれの生涯に、壮大な命のドラマが秘められているのだ。
それぞれの命に、例えようも無いほどに尊いドラマが隠されているのだ。
白銀の森に、彼らの魂の声が聴こえる。
**** WOLFTEMPLE ****