<2007年11月6日>

里に降りた熊を世間は「害獣」と呼び、手段を選ばぬ方法で捕殺します。

そこには「せめて・・」という人情的配慮はありません。

「せめて苦しまぬように・・」という発想は微塵もないのです。

重傷を負った熊を、何日もオリに放置しているような有様です。

原型が無くなるほどにズタズタに足を裂き、

骨に食い込んでいく「ワイヤートラップ」のワナに掛かっていても、

誰も熊に同情しません。見物しているだけです。

世間は熊の苦痛など一切無関心なのです。

迷惑!!目障り!!と叫んで敵視するだけです。

熊の事情など知ろうともしないし、熊の心境など最初から無視です。

共生を謳う人間が、平和を語る人間が、文化を誇り、知性を誇る人間が、

山の命に対しては残酷な支配性を発揮するのです・・・・・


熊はその後もしばらく森に訪れました。

ドッグフードを食べに来た訳ではありません。

エサを求めて来る訳ではないのです。

「なぜか、なんとなく、ここが好き・・」・・・こんな感じです。

この前「だめだよ!」と言ったので、あまり近くまでは来ませんが、

離れた先で熊の姿を見かけました。 静かに、穏やかに佇んでいました。

犬たちは吠えません。「クンクン」と甘え鳴く犬もいます。

空が茜色に染まっています。何かが胸に込み上げてきます。

熊がこれからも、過酷な試練を乗り越えていく姿が目に浮かびます。

私はせめて、熊に祈りを捧げました。

熊の視線を感じます。熊はじっと我々を見つめていました。

森に蒼い闇が迫ってきます。

熊はやがて、ゆっくりと姿勢を変え、戻って行きました。

私はその時、しっかりと熊を見つめました。

この一心のすべてで、熊の安息を祈りました。

**** WOLFTEMPLE ****