<2007年11月4日>

熊はしばらくたたずみ、やがてゆっくりと戻っていきました。

大きいと言うよりも、とにかく「塊感」が凄かった。

「岩」のような感じです。しかし動きは非常にやわらかく、しなやかでした。

もし本気を出せば信じられないほどの速さを発揮することが容易に想像できます。

オスかメスかは分かりませんが、大きさから見て多分成獣だと思います。

熊の力の凄さは村の人から聞いていました。

日本黒熊(月の輪)は大型種ではありませんが「信じられないくらいの力持ち」だそうです。

犬たちはさすがに興奮していましたが、怖れてはいませんでした。

むしろ遊びたがっているようにも見えました。

熊が去った後も、辺りに熊の気配が残っていました。

ラップ音がまだ続いています。

夜中もときどき犬たちが起き上がって何かを注目していました。

翌日、留守にするのが心配でしたが仕事に行きました。

夕方、帰路に着く中で、何かが胸に伝わりました。

森に着くと、そこは静寂でしたが、様子が変です。

「ジン」のすぐ近くの柵が壊れています。

しかしジンは無事でした。怯えてもいません。

フェンスで囲った遊び場の中央に置いた大きなポリバケツがありません。

それはドッグフードを入れてあったのですが、ポリバケツごと無いのです。

「一体どうやって運んだのか??」全く不思議でした。

フタも落とさずに、一粒のフードもこぼさずに、

大きなポリバケツを持った状態でフェンスを乗り越えることなど出来るのだろうか?

どう考えても不思議でした。

私はポリバケツを探しに森を徘徊しました。

犬舎から100mくらい離れた場所にポリバケツがありました。フタもありました。

かなりの量のフードが入っていたのですが、空でした。

フタとバケツ本体に、咬んだ跡がありました。つまり熊は咥えて運んだのでした。

「大変だったろうな!」と思いました。

すぐ近くに大きな熊のフンがありました。

枝で中を調べて見ると、やはり植物質の食事です。

まだドッグフードは消化されていない時のフンのようです。

私は空のポリバケツを持って犬舎に戻り、ジンの柵を修理しました。

それにしても、ジンもさぞかしビックリしただろうと思います。

しかし全く怯えていないので、一体どういうことなのだろう。

(ジンは鎖で係留してあるので、逃げることが出来ない状況だったのです。)

もしかして友達なのか? 一緒に遊んだのか?

私はその場に座り、しばらく瞑想しました。


■「03」に続きます。

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