ちょっと前の話。
その日は暖かく、ホワイトデーの前と言うことでデパ地下はバレンタインのお返しを買う人達でにぎわっていた。
ホワイトデーをイメージして爽やかでポップな水色をした店内に枯葉色のコートを着た男がチョコレート売場のシ
ョーケースの前に立っていた。
鼻歌でも歌いだしそうなくらいの上機嫌で周りの賑々しさを眺めて楽しんでいたが女性店員が合計金額を打ち込
んだ計算機を差し出した画面を見て一瞬にして顔をこわばらせて「こ・・・こんなにいっちゃいましたか・・・・」
と、ものすごくかっこ悪い本音を思わず漏らした。
ま、俺だ。
思えば今年は義理チョコが多かった気がする。年齢的なものとか色々あって・・・まあ、正直言って見栄かな。
1000円以上じゃないと。というのがあった。だから・・・結構いっちゃった。
大げさな紙袋をさげて歩く。
そういえば一人、洋菓子が苦手な人がいたな・・。
そんな事を考えながら煎餅屋に行ってみたら、ホワイトデー用の物がタイムリーにあったのでのぞいていたら
店のおばさんが「お客さん、モテモテだね」
大きな袋を見てそう言った。
「そんなんじゃないですよ、みんな義理チョコへのお返しですよ」
愛想笑いを浮かべて返した。
「そうですかぁ。でも本命の人にはもちろん人とは違う特別な奴用意したんでしょ?」
(本命?本命ってほどじゃないが気になる女子はいるな・・・。とはいえ年齢的に10以上離れているし、とどめに彼
氏がいるとの情報を得ていた。ま、でも気になるっちゃ気になっている)
「いや、しかし俺は見た目よりも歳いってまして・・・特にこれといったアピールポイントもないし・・・」
「あのね、お兄さん。女が重視するのは歳とかアピールとかそんなんじゃないの。なんだかわかる?」
(お兄さんて、アラフォーですが・・・。女性が重視するもの・・・。ハートとか思いやりとか誠実さとかがきちゃうん
だろうな。)と思っていたら・・
おばさんの顔から一瞬笑顔が消えて
「顔よ!」
「まじっすか??」
意表をつかれた答えにそう言ってしばらく固まった。
「勉強になりました!」
深々と頭を下げ、デパートを後にした。
顔か・・・。いずれにしても・・・。んー・・・勇気づけられたのか、なんなのかよくわからない気分だった。