今頃になって取り上げるのは気が引けるのですが、ネット上の意見が復古主義調なので、私見を述べておきます。

 

前提として、ネット上に出回っている情報は、かなり真実とは程遠いということを頭に入れておいた方がよいでしょう。9割超は残念ながら嘘です。

自己の主張を正当化するために、都合の良いことだけをつなぎ、自身の希望的感想を述べているだけに過ぎないものが多いように思います。これらがなぜ、一般にも広く受け入れられるかと言えば、感覚的に受け入れやすい要素(インパクトやムードなど)を持っているからですね。

 

自動車で例えれば、トヨタ車は良い車なので一番よく売れる、ニッサン車は出来がよくないので売れず国内3番手メーカーというムード感になります。販売台数という事実の裏付けとして通用しそうな理由付けです。

 

しかし、ニッサン車の販売台数は確かに少ないのですが、売れていない原因が車の性能にあるという確証はないのです。

確かに良し悪しという判断と結び付けられて事象をとらえるというのは自然な思考の流れです。(性能を車の魅力などほかの言葉に変えても成立します。→トヨタ車は魅力的、トヨタ車は豪華等々)

よい車だから買ったんだは、なぜ買ったかを問われ場合の答えの一つです。そしてそれは当然後付けなのです。真の理由は実に様々なはずです。トヨタというネームに限れば、みんな買ってるトヨタだから買った、であり、これはブランド力ですね。

「日本はEVで出遅れた」…嘘でしたね

量産BEVを世界初で出したのは、三菱i-MiEV、日産リーフです。両社は日本の企業ではないのでしょうか?(既出)

 

訂正するとすれば、「トヨタは出遅れた」となりそうです。現在ではこのように語られることが多いようです。しかし、トヨタは2014年には、BEVではないものの世界初の量産型水素燃料電池車のMIRAIを発売しています。

 

トヨタ初のBEVは2022年のbZ4Xが大々的に報じられましたが、2020年にはLexusブランドですが、UX300eを発売しています。

bZ4Xのような初期不良もなく、よくできたBEVとの自動車評論家の評価を得たのですが、トヨタ初のBEVとして話題にはなりませんでした。

思うに、トヨタは、BEVは高級車のカテゴリーと捉えており、トヨタブランドで売るには(個人所有は、リセール面での不利と判断したのかサブスク設定のみでスタートしたことからも)一般の顧客ニーズに応えることはできないと判断したのでしょう。

実際、日本国内ではEVブームは起きず、リーフは売れない車の代名詞であり、ニッサンからこれに続くBEVは10年以上発売されませんでした。(海外でもそこそこしか売れていません。後発テスラに惨敗、モデルチェンジをしても後発のEV車に大きく後れを取っています。)

「トヨタの全方位戦略が正しかった。」…トヨタは内燃車こそ正道とは言っていない

トヨタは豊富な資金にものを言わせ、さなざまな動力車の実用化、改善に努めているようです。各国の企業との提携にも積極的で、日本企業が撤退せざる得ない状況の中国であってもBYDと共同で事業を展開しています。先見の明と偏見にとらわれない判断が世界一を維持させる原動力です。

生産台数や販売台数で競うのではなく、車の持つ魅力つまり商品の魅力で売るという体制を維持する限り、世界のトヨタというブランドは揺るがないでしょう。しかし、日本国内では珍妙な愛国心を振り回す人々が贔屓の引き倒しをしているように見受けられます。これは傲慢さを生む発想です、この危惧からかグローバルな視点を持ち続けるため(要するに内弁慶に陥らないよう、世界を敵に回さないように)、トヨタは拠点をアメリカに移すようです。

「EVは終了」…大嘘です

自動車は、黎明期からエンジン、モーターそれぞれを動力とするものが開発されました。その後航続距離の延伸を図る上で化石燃料からエネルギーを取り出すエンジンを動力とする方が有利と考えられました。

エンジン本体は重く、大きくなりますが、燃料タンクは小型で済みます。一方、モーター動力は本体は小さくて済みますが、蓄電池は大きく嵩張り、途方もなく重くなります。このことは、現在でもBEVの弱点となっています。

自動車の抱える課題は、今始まったわけではなく自動車を作った時点で既に抱えていた問題です。動力の流行が再度原点に戻ったというだけに過ぎません。

 

時代が進むにつれ、動力そのものから発生する環境汚染物質をどう抑えるかが問われるようになってきました。自動車が走ることによる環境問題です。(排ガス以外にも騒音等環境にかかわる性能は他にもあります。)

それらを生産段階までもひっくるめて環境問題として同一に括るのは、すり替えであり、労働問題まで持ち出して論ずるのと同様、言い訳レベルに思えます。

 

少なくとも国際的な排ガス規制はどんどん厳しくなっています。これを従来通りの内燃エンジンの開発でクリアーするのは不可能に近くなるでしょう。アナログであるエンジンの開発はデジタルのモーターのように理論通りとはいかず、試作品を作りそのデータを収集・蓄積して改良を加えなければならず、おいそれと開発期間を短くはできないのです(最低でも20年かそれ以上かかります)。しかし、自動車の開発は他の分野同様にスピードアップが求められています。

VW社はクリーンディーゼルを切り札として開発していましたが、期間内ではクリアーできず、データの改ざんを行い、見かけ上クリアーしたかのように見せかけようとしました。これがばれて大問題となりました。

日本の自動車各社の不正問題もこの新車開発のスピードに追い付けなくなってしまっていることに起因しています。豊田会長の非常識な発言は、実はこのことに起因しての大失言です。

とりあえず、結尾

時代は進んでいきます。後戻りはできません、これは動かしがたい事実です。

どうなるか?未来は分かりませんが、よい方向へ向かわせる努力は可能でしょう。またそうすべきだと思うのですがどうなのでしょう。

(6月25日加筆・修正)