夜に最近よく行く居酒屋でテストの採点をしていたら、店員の若い女の子に「先生なんですか」と声をかけられた。もちろん接客の一貫として。隣り合った常連客と仲良くなるとかもうウンザリなぐらいに酒飲み経験値を積んでいる自分としては、これぐらいの疎遠なコミュニケーションが心地よかったりする。「よく働きますね」と返したら、「暇なんで」と困ったように返された。(でしょうね)と内心思いながらも、働き者らしきことは普段の接客態度で十分みてとれるので嘘はなかったつもりだし、二軒隣のスナックの80代と思しきママさんも彼女のことを良さげに言っていた。

 

テストの採点なんか単調すぎて飲みながらじゃなきゃやってらんねーよ、て思いながら毎度毎度ビール片手に高速でおわらせる。今日もラストオーダーまでの30分程度で高速でおわらせた。不良な教員であることは絶対に間違いない。が、気にもしていない、なぜなら自分のことを割合よく知っている学生の多くはこれが不良な教員であって、学生の成長などに期待もしていなければ真面目に授業をやろうなどという気持ちはないことを知っているからだ。というより、むしろ早めにそれを知ってもらって学生とこちらとの間にウィンウィンの了解をつくる。そうしてここ数年やってきた。教育者などでは決してないし、ゆっても先生、学生のこと思ってますよね?みたいな甘えたやつは本当に好きじゃない。心から。成長は勝手にしてくれ、こちらは仕事以上には手伝わねぇから、という感じ。

 

前置きが長くなったけれど、そんな居酒屋での1時間弱を過ごしてから夜更けの鶴川街道沿いを歩いていたら、なにか書くものはないかと色々と夢想した。野球の話、仕事の話、自分語りの話、色々あるけれど、こんなに思うままに何か書きたいなと思うのはいつ振りだろうか。今までもブログなんかを開設したことは多々あるけれど、何かを整理するためであったりとか、備忘録的にであったりとか、無駄なことを本当に無駄な気持ちで書くことは上手にはできなかったので、なにかここがそういう扱いになっている気がする。

 

野球の話は一旦置いておいて、今朝(昨夜?)みた夢の話にしたいと思う。

おそらく夢は比較的鮮明にみる方で、もちろん忘れたりもするけれど、よく覚えている方だと思う。いつしか友人に自分が起き抜けに書いた夢の記憶をみせたら「こんなに文章にできるほど覚えていることはない」と驚かれた。おそらく覚えていることもそうだけど、起きてすぐに文章にまとめようとする行為とか、それができることが稀有なのだと思う。それを友人にいわれたのは4~5年前なのだけど、そういわれて昔のmixiの日記なんかを遡ってみたら、20代前半の頃にみたホラーな夢がしたためられていた。改めてみても、少し情景が思い出されるような、細かい描写の夢で若干ひいた。おれ気持ち悪い、と思った。

 

それはそれとて、今朝みた夢はいままでとは違う、かなり印象的な夢だった。山というか小高い丘というか、その中腹にいてジェット機が墜落する。その山の自分がいるところよりも上の方に飛行機は落ちて、みていると飛行機はバチンバチンと何度か花火のように弾けながらひっくり返ったりしている。この場にいては危ないと思い山を降りることにして、割とちゃんとしたアスファルトの道を下山していく。道は大きく道にカーブしていて、曲がるとそこが坂のおわりだった。目の前はごくごく普通の家が並んでいて、自分は道の正面にある建物と建物の間の小さい路地に逃げ込もうとする。そこはその先に通じていて、建物の反対側に抜けられると思ったからだ。

ところが、すぐ後ろに中年の男性がいて「そんな狭いところに逃げ込むんじゃない!早くできるだけ遠くへ逃げるんだ」という。

(この路地にはいっても遠くには出られるんだけど)と思いながらも、もともと走ってきた道なりに走って、左に大きくカーブしたところで後ろを振り返った。すると今きた道の先が赤く煌々と光ってこちらに近づいてくるのがみえる。次第にカーブの先、坂の上から巨大なマグマが垂れ流れてきた。どうして飛行機の墜落事故が火山の噴火になったのかはわからない。そこはやはり夢なのだけれど、先ほどの墜落現場からここまでマグマが迫ってきたスピードを考えると相当のスピードでとても逃げ果せるとは思えないほどだった。後にして(目覚めてから)思えば、2011年の震災で水が襲ってくる、あるいは近年みる土砂崩れの映像に近い。さらに逃げようとしたところで目が覚めた。目が覚める直前か直後か、一度家に戻ってうちの3匹のワンちゃんたちを助けに行かなければ、助けに行けるか、と思い至ったところまで覚えている。

 

夢の記録癖は昔からあって、前述した友人に指摘されてからは少し意識するようになった。そのせいではないが、かつて付き合っていた心の弱い彼女も異常なまでに夢に対する記憶力があった。それもあって、彼女に対しても、自分に対しても、夢が自分のどんな状態を表しているのだろうと考えたりすることは多い。

 

今回は飛行機事故、マグマ、どれも今までにみたことがない戦慄させられる状況だったから、起きた時の目覚めは最悪だった。考察するのにきっかけとして、ネットで「夢 溶岩」などと検索してみたものの、あまりいいイメージは出てこない。ただ経験上、夢の中での悪い印象は必ずしも状態の悪さを示しているわけではなくて、むしろ逆の方が多い気がするぐらいだ。だからめげずに丁寧に車の中で考えてみたりした。

 

山を下る(坂を降りる)という行動自体は悪くない、何かに追いかけられるというのは夢に出てくる定番のイメージだ、飛行機事故とマグマは初めて出てきたけれど、前者の二つだけみれば、何か目前の悩みとか追い詰められているものから気持ちが解放される印象だ。それは現実的な事態の打開とは限らなくて、自分の中で心の整理がついたり、開き直ったり、諦めがついたり、そういう意味での解放、仏教的な言い方をすれば「解脱」に似ている。

対して飛行機、逃げられないイメージ、余程の鬱屈、そして追い詰めるマグマ。何かに追いかけられる夢はこれまでもあったものの、それがマグマ、万事休す。死のイメージ。死は夢で出てくる場合はむしろ上述の「解脱」(生まれ変わり)なので、むしろその後すっきりしてくることが多い。たとえば(あくまでもたとえば)恋人と別れてモヤモヤしていたのが、急にスッキリしたりとか、そういう感じだ。もう少しいえばマグマ、火のイメージ、(火山)爆発。

 

そういうものをまとめてみると、自分の中に鬱屈して封じ込められていたものがブレイクしようとしている(あるいはした)という感じかもしれない。たとえば何も考えずに思うままキーボードを叩いているこのブログはまさにそのイメージのような気がするし、週末のオープンキャンパス(仕事)がおわった解放感かもしれない。ただし、自分の中でこれっぽいなぁと思うのは、口内環境で……。一週間前に抜歯した親知らずが最悪のコンディションでずっと痛み止めを飲んでいて気が滅入っている。それが、痛みはあるものの精神的に開きなってきているのが今日だ。あるいはもう治癒しはじめているのを感じ取って夢にみたのかもしれない(だとしたら明日にはもう痛くなくなっているかも)。

そういえば、抜歯跡の歯茎に空いた大穴、火山火口によく似ている。

思えば居酒屋の女の子に話しかけられて「よく働きますね」なんて気遣ったのなんて、昨日までだったら苛々してできなかったに違いない。なんとなく晴れやかな気持ちに向かっているものとして、今日の夢は前向きに捉えようとしているところ。