左の肩に異常が起き、腕が上げられなかったり、可動域に極端な制限が出たのが二年前の10月ころだった。
 俗に言う五十肩というものだろう。この疾患は四十肩とも言われるが、これは発症した年齢を示しているだけなので、基本的に症状は同じである。当時のわたしはまだ50代であった。
 肩の関節などが炎症を起こし、それが原因になって激痛を伴う。肩の動きが阻害され、腕が上がらない、背中に手が回らない、風呂などで髪を洗いづらくなるなど、命の危険とはあまり関係無いが、生活の質をかなり落とすことになる。
 症状はよく知られているが、原因については明確なものが無いそうだ。考えられるのは不意に肩に余計な力がかかり、それが元で組織が炎症を起こすというものだ。
 なぜに四十肩、五十肩と言われるかは、その年代に発症するケースが多いとのこと。三十代でも発症するが、若い場合は肉体がそれなりに若い子ともあって炎症まで行かなかったり、延焼しても大事にならないという。
 逆に六十代、七十代でも発症するが、この高年齢になると肉体的な老化に伴って、肩に負担をかけるような運動を行わなくなる。そのため、肉体の強度と過負荷運動のバランスから、この病は四十代、五十代に多くなるそうだ。
 そんな今、六十代のわたしは、右肩に違和感を覚えてから可動域が狭くなったので六十肩ということになる。
 そして何故にこんな状態に陥ったのかが判らない。過度な運動など目が見えなくなる前からほとんど行って居ないし、肩を酷使するような作業は行っていないはずである。なのに違和感は突然訪れるのだ。
 違和感を覚えたのは三週間ほど前になる。位置で言うと肩の付け根、三角巾の腱のあたりに鈍痛を感じた。これが二年前の左肩によく似ていたため、もしかしたらと思ったが一週間程度をかけて鈍痛は動くとそれなりに痛みを覚えるようになる。
 可動域はそこまで悪く無かったのだが、上腕部を水平から上に上げることができない。水平以下であれば前後右に動かすことはできる。あと腱のあたりを押すと痛みを覚える。
 放置していたら何とかなるかと思ったが、どうやら可動域が日々、狭くなっているように思える。次に現れた症状としては、肘を伸ばした状態で腕を水平にできない。肘を曲げていると水平までには上がるのだが、まっすぐにすると痛みが襲う。

 そして二週間を過ぎたところで腕を胸の前、そして背中に回すのが難しくなる。ここで諦めて近所の接骨院に向かった。
 これは二年前に左肩を治していただいたのと同じ病院だが、どうやら院長が交代になったとかで、治療方法なども変わったようである。
 問診のあとに右肩のマッサージを行ったが、かなり筋肉が固くなっているとのこと。どうやら痛みを覚えている状態で、無理矢理動かしているうちに周囲の筋肉などに負荷をかけているようだ。
 その後電気式マッサージを行い、押すと鈍痛を覚える部分は冷湿布を行う事で治療を終えた。この時点であまり高価は感じず、果たして今回はどれほど時間がかかるのだろうと不安を覚えていた。
 肩の関節は人体の中で一番、自由度の高い部分である。接合部分は球体になっており、同じく球体になっている股関節より前後左右に可動範囲が広い。そしていろいろな方向に動くように、複数の筋肉が配置されている。
 筋肉はその構造上、刺激で縮むことができるが自分でのびることができない。なので関節を駆動する筋肉は、延ばす縮むの動きを行うために、反対方向に動くものと一対になっている。
 三角巾は上腕部を上に上げるためのもので、大胸筋は上腕部を胸の前に稼働させるためのもの、他にも多種の可動を行うために骨に複雑に腱が接続されている。
 わたしは三角巾の負担がかかる運動を行って居るようである。日頃からストレッチを行って居ても足だけであり、今後は肩も含めて行う必要があるのかもしれない。
 ググって見ると判るのだが、五十肩というのはなかなか治療方法が無いようである。あと、この症状は関節部分の炎症から関節部分が一部変形し、可動域が狭くなることを言うようだ。
 わたしの場合、訪問看護士さんに可動域を調べてもらったのだが、他人が腕を動かす分には可動域は狭くなっていない。つまり筋肉の炎症で自立動作が難しくなっているようだ。それだけなら筋肉の炎症が治まれば、可動域はもどるだろう。
 こちらで行った治療は押すと痛みを覚える部分に冷湿布を行い、普段はその部分の可動を抑制した。三角巾で腕をつるなどすれば良いのかもしれないが、どうしても右腕を動かさないといけなくなるのが透析だった。
 二年前のときは左腕であり、透析時の左腕はほとんど切り捨てられたのと同じものである。透析中にほとんど動かないために痛みも覚えないし影響は無かった。
 しかし今度は右腕。透析中に行う動作は右腕が基本だ。透析中にずっと寝てしまえば良いのだが、そうもいかないのでかなり困ったことになった。
 接骨院で治療を受けて三日ほどたつと、肩の可動域がわずかにもどったように思えた。これは一時的なものかと思ったが、時間がたつにつれて確実に可動域が復活している。
 この復活の順序は悪くなった順番と同じだ。腕が水平より上がらない、肘を伸ばした状態で水平に保てない、胸の前、背中に回せないの順番が、その順番で復帰している。
 やがて押して痛みを覚えていた部分が無くなり、7割程度の可動域が復帰した。やはり筋肉の炎症が治まると、肩の動きは元に戻ったので本来の五十肩とは異なるのかもしれない。
 とりあえず今回もわりに短い期間で収まりそうだが、今後も考えて前進のストレッチは行った方がよいだろうと思わせるものだった。

 次回は、治療にかかるコスト分担について語りたい。