先日、下北沢病院に訪れたときのことだ。
 テレビでの宣伝効果も切れて、外は灼熱と突然の雷にゲリラ豪雨、しかも地震のフルセットと言う事で訪れて居る患者さんは少なめだった。医師が言うには病棟も空いているので入院するなら今と言う事。
 そんなのは軽く聞き流してベッドに座ると、両足を投げ出して足のメンテと処置を行ってもらった。本日は珍しく、病棟担当の看護士さんが外来に降りており、わたしが入院中にも対応したとのこと。
 JSリカちゃんからJKリカが販売されているなどの雑談を繰り広げた後、処置も終わって靴下を履かせて貰う段階になってこんなことを言い出した。
「ところで、右足にはどっちの靴下を履かせればよいのですか」
 は? わたしの靴下は登山用の生地が分厚いものであり、左右の区別は無いはずだ。そこを普通に問いただしてみた。
「どっちってどういうこと?」
「ですから、右足にはベージュの靴下を履けばよいのか、紺色の靴下を履けば良いのかという……」
 ちなみにわたしは一足一組の靴下しか履いていない。つまり、その二つの靴下が色違いだったということである。
 わたしはアマゾンで同じ靴下を購入していた。注文履歴から商品を引っ張り出して、それを再注文していたので素材や形、そして色も同じと思っていたのである。しかし、どうやら左右で異なる色の靴下を履いていたらしい。
 わたしは翌日、透析クリニックに出向くと、左足の処置をしてくれる看護士さんに聞いてみた。
「ところで、わたしの靴下ですが、左右で色が違うのですか」
「そうですけど、わざと色を変えていたんじゃないんですか。ファッションの一環と思っていましたよ」
 何と言うことだ。随分と前から左右の色違いを起こしていたようである。そして今時の風潮か、それを不自然と思われていなかったようだ。
 わたしとしては脳内イメージで左右とも同じ色の靴下を履いていたつもりだった。他人はそこまで人の様子に注目しないと言うが、まさにその通りだった。
 そもそも普段は真っ赤なパジャマで外を歩いているが、誰もわたしに注目している様子は無かった。そもそも白い目を向けられてもそれを感じ取ることができないのだが。

 何度か記事に書いているとおり、わたしにとって物品の色情報は自分で確認出来ないので苦手である。
 iPhoneにはタップタップCという、カメラで撮影した物品を解析して教えてくれるアプリがあるのだが、その情報の中に物品の色情報も含まれている。
 試しに透析中、靴下を履いた右足と左足を撮影してみたところ右足は「ベージュの靴下」、左足は「ブルーの履き物」という解凍が返ってきた。やはり左右で異なっていたようだ。
 このようにアプリの手助けを借りればわりに性格に色情報を確認出来るが、いちいちアプリを起動するのも面倒だし、そもそもカメラがきちんと被写体を捉えているかが判らない。なので背景はシンプルにして撮影対象が単独でカメラに写るようにしなければならず、少々面倒である。
 わたしは目が見えていた頃からファッションに関心が薄かった。第0世代のヲタクでもあるし、さすがにアニメキャラクタのイラストがプリントされたTシャツは着ていなかったが、普段着はシンプルその者。
 上は真っ黒の半袖Tシャツと白色の長袖ワイシャツ。夏でも長袖は替わらず袖を折って半袖としていた。下はデニムのズボン、いわゆるGパンである。
 おしゃれのポイントでは無いのだが、真っ黒のTシャツは背中に白色で漢字一文字が書かれていた。有名書道家が描いたもので、普段は楽天を使用しないのに、これを購入するために利用していた。
 文字の種類は「魂」「跳」「碧」など最終的には20種類程度そろえており、その中で「愛」だけは文字色が赤だった。
 わたしは会社に出向くと、夏場はワイシャツを脱いでTシャツ姿でいるのだが、社内の人間は背中の文字にバリエーションがあるのに気が付いており、知らない間にどんな文字があるのかを調べていたとのちに聞いた。
 目が見えなくなってからは着る者の選択はほぼ無くなっており、一見すると同じ服をいつも着ているように見えるが、実は同じ服をいくつか持って居るパタリロのパターンである。
 それでも周りから見た色のコーディネートにはそれなりに気を使う方で、色の識別ができないためにワイシャツの形状と色を結びつけていた。
 通常のエリだったら黒色のワイシャツ、ボタンダウンだったら白と青のボーダーという風にしており、記憶に間違いがなければ脳内イメージと外見に差分は出ていないはずだった。
 最近は会社に出向く以外はパジャマで外出しているので、そんなところを気にしてもいないが、一応見えなくなった分だけおしゃれには気を付けているはずが、左右で色違いの靴下である。
 とりあえずタップタップCで色判別して、同じ色で組みあわせておくしか無いだろう。
 やはり自分で直接識別できないものは面倒だと感じさせられた。

 次回は、最近起きている米不足について語りたい。