ここのところ、テレビがマンガ原作のドラマで原作改変を行い炎上を繰り返しているが、どうやら話題になっても他局のことと気にしていないのか、いろいろなテレビ局で巻き起こっている。
 今回は手塚治虫氏のマンガ、ブラックジャックをテレビ朝日が実写ドラマにするらしい。ブラックジャックは今までにも、加山雄三氏や本木雅弘氏がブラックジャックになって実写ドラマになっているが、素直にアニメにすれば良いのにと思っていた。
 日本テレビではブラックジャックの声を大塚明夫さんが園児、ピノコ役を故水谷優子さんが演じていたアニメがあってそれは良く出来ていたが、途中でブラックジャック21になってからオリジナル要素が増えて、一話完結の良さが無くなっていたような。
 わたしの母親もマンガのころからブラックジャックが大好きで、日本テレビのアニメは当初、それなりに楽しんで見て居たが、21になってからストーリーが判りづらくなって見るのをやめてしまったようだ。
 原作のエピソードは山ほどあるのに、それをアニメ化ドラマ化しないで、なぜにわざわざオリジナルストーリーを加えるのかは謎である。もしかして、テレビの脚本家の方々は「、たかがマンガ屋の作ったストーリーなど使わなくても、わたしの方が天才的なドラマが作れる」とか思って居るのだろうか。
 確かに件の「セクシー田中さん」改変問題を見て居るとそんな思い上がりが読んで取れる。参考までに、手塚治虫氏はブラックジャックを週刊連載していたが、アイデアについては枯渇して困ることは無く、逆にアイディアが出すぎてどれを描くかの選択に迷うほどだったようである。その選択の結果があの名作揃いの連載だったわけだ。
 話をテレビ朝日版に戻して、キャスティングが発表された時点で物議を呼んでいるようだ。
ドラマ『ブラック・ジャック』Dr.キリコのキャスティングで「原作改変」がトレンド入り
 問題となっているのは非合法の安楽死を請け負うもう一人の黒い医者、キリコが男性から女性になっていることだ。
 キリコは医者から見放されたり治療を継続していては周りの人間に負担を与えると本人が望んだ場合に、報酬を得て自然史に見えるように、そして苦痛を与えないように安楽死を行う医師である。
 もともとは普通の医者であったが従軍医師として戦場にいた彼は、重症患者を多々見て居るものの、機材も薬剤も足りない中でせめて直る見込みのない兵士たちを安楽死させていた。
 そのとき「これで楽になります」と笑って死んでいった兵士たちの姿を見ているうちに、命を継続させることに疑問を思うようになり、そして安楽死を行うようになる。
 キリコは自分の父親も、そして自分すらも安楽死させようとしていた。ただ、医者ではあるために助けられるのであれば助けたいとも言っている。
 わりに設定が暗めなのだが、それを女性配役にしてどのように演出するつもりなのだろうか。
 少々怖いのが「セクシー田中さん」改変でもあったが、ストーリーに無理矢理恋愛要素を入れることだ。キリコは特徴的な登場人物であるが、あくまでゲストキャラクタというところでマンガ本編にはあまり出て個無い。
 もしかしてドラマではブラックジャックとキリコの恋愛模様でも詰め込むのではないかという疑問もある。いや、ブラックジャックにはきちんとピノコがいるではないか。
 もし今時のドラマにするというのであれば、あえてブラックジャックの設定などを遣う必要があるのだろうか。医療マンガとしての名前を使いたいだけだとしたら、それは辞めていただきたいとわたしは一人のブラックジャックファンとして願うばかりである。
 作品に対してリスペクトするのであれば、マンガのエピソードを現代向きにアレンジする程度で表現していただきたいものだ。それで手塚治虫氏の原作を超えていただきたいものである。
 キリコを出すのであれば、キリコが初登場する「ふたりの黒い医者」エピソードでお願いしたい。
 ストーリーは、とある重症患者の母親と、その母親を献身的に看病する兄妹。母親はこれ以上の負担を望まずキリコに安楽死を依頼し、兄妹は必死に貯めたお金で不可能とも思える手術をブラックジャックに依頼する。
 しかしキリコの安楽死が一歩早く、その施術中にブラックジャックと兄妹が乱入、兄妹がブラックジャックに払った金をキリコに差し出し、手術が成功すればブラックジャックのもの、失敗すればキリコのものということで手術を行う事になる。
 その手術中に兄妹はなぜに安楽死を行うかをキリコに訊ねるのだが、そこで従軍医師のころの話をするのである。
 手術は無事終了、そこでキリコは退散する。このまま時は過ぎ、親子が退院する日にとある場所で顔を合わせるブラックジャックとキリコ、そこで二人は思いがけないことを耳にする。
 この先は実際にマンガを読んでいただくしかないが、あの長い階段の上で笑うキリコと、下で絶叫するブラックジャックの姿はとても印象的だ。
「それでも私は人をなおすんだっ 自分が生きるために!!」
 このエピソードをどうか原作より素晴らしいドラマにしていただきたい。所詮、マンガ屋の作った原作ごとき、テレビという選ばれた環境で仕事をする脚本家の天才的な手法ならどこまでも面白く出来るのだろう。
 とりあえず、ドラマは評判を聞きつつ、キリコの回だけは聞いてみようかと思っている。

 次回は、ふと思いついた談合疑惑について語りたい。