ゴルゴ13と言えば東洋人風の男で仮の名前はデューク東郷。基本的に引き受けた依頼人には二度と逢うことがなく、彼の仕事結果は完璧というわけである。
 そして彼への報酬は前払いでスイス銀行の指定講座に振り込むように言われる。スイスと言えば永世中立をかかげており、どちらの陣営にも与しない。その代わりにどの陣営であっても銀行口座を作ることが可能である。
 スイスの銀行の特徴は顧客の秘密を守ること、預け入れられた資金については利息がつくどころか手数料を取られるが、何があっても情報と資金を守るのである。そして両陣営の資金がスイスに集まるために、どちらの陣営も迂闊に手を出せないわけだ。
 この経済を把握することでスイスは永世中立と国家間の扮装に参加しないという立場を築いている。よくレフトサイドの方々が誤解しているのだが「スイスのように経済力と国家間交渉能力を身に付ければ、軍隊を持たずに永世中立になれるのだから、日本もそうすべきだ」。
 スイスにはきちんと軍隊があるし、国民は軍事訓練に参加しなければならない。非武装中立ではなくて、武装中立なのである。そうでないといかれた独裁者当たりが戦争をふっかけてきたときに対向できない。
 各国要人の札束を管理する以上、それを守るための拳もきちんと備えていることを認識しよう。
「ところでミスター東郷。目標はCのプーとRのプーなのだが」
「報酬は二人で200億ドル。スイス銀行の指定の講座に振り込め」

 ところで、ゴルゴ13はプロのスナイパーであり、彼に仕事をたのむためにはそれ相応の料金が必要である。
 何しろ場合に寄れば暗殺を行うために、対立組織から狙われることもある。危険がつきまとうこともあるし、常人では不可能な仕事を行うので、その報酬も桁外れになる。
 このように「困難な仕事=高価な報酬」というのは判りやすい図式である。ゴルゴ13ほど危険で無く手も、特殊な技術を持った人が行う仕事には、高い報酬が当たり前だ。
 例えば人気の漫画家や小説家、アーティストと呼ばれる方々は誰にも真似できない特殊な技術を持っている。昭和のころの芸能人であれば、その外見などが特殊でありそれが技能に繋がるわけだ。
 欧米ではこの技術に対してそれに見合った報酬を払うのは当然のことと考えられているが、日本ではいわゆるおともだち価格で知り合いだからとそれを値切る場合がある。
 貴重な技術を値切って依頼することは、その人の技量に対して侮蔑しているのも同じだ。「おまえの技術なんて所詮、そんなもの」と言われているのだろう。
 それでも日本人は同調圧力や周りの空気を読んでしまうためにそれを受け入れてしまうが、それは技術を正しく評価できないということであり、ノーベル賞を取った学者や技術者が、日本を見限って海外に流出してしまう原因にもなっているのだろう。
 なのでわたしは相手が親しい友人でも、何らかしらの技術を使うことを依頼する場合は、相手の提示された報酬を払うようにしている。まずは以来側の意識を変えなければならないだろう。
 ところが、地方自治体レベルでそれが判らない場合もある。
ヒグマの駆除はいったい誰が?地元猟友会と“交渉決裂” 報酬の低さなどを理由に活動辞退した問題 北海道奈井江町(Yahoo!ニュース)
 この自治体がヒグマの捕獲のために提示した報酬は、相場の3分の1程度だったようである。そこで猟友会とは話が合わずに断られたら、熊が民家まで300メートルのところに出没、慌てて猟友会に連絡を入れようとしたが通じなかった。
 一応こどもたちの通学には大人が付き添うことになっているが、果たして野生のヒグマ相手に普通の大人がどれほどの相手ができるのだろうか。言っておくが相手は言葉は通じないし、場合によると人肉の味を覚えた熊であれば、目の前にいるのはおいしい肉のかたまりである。
 猟友会への依頼も「あなたたちも趣味で熊が射てるのだから良いでしょう」とか思って居るのだろうか。熊を仕留めるための距離での狙撃である。それこそ命がけの仕事になるわけだ。
 おまけに熊を仕留めれば想像力の欠落した環境保護団体からやいのやいの言われるわけである。何となくこの構図は自衛隊に似ている。
 もし誤射で第三者がケガを負うことになれば人身問題となる。熊を、特にヒグマを相手にすると言うのはそういうことだ。
 この自治体が今後どのように動くか判らないが、報酬金額を改めて依頼するしか無いだろう。

 プロの仕事を甘く見てはいけない。日本は職人に対してそれをきちんと評価できるはずだが、どうしても金銭がからむとそれをうやむやにするような傾向がある。
 なので仕事の依頼をするときにも、報酬額については後回しにしがちだ。依頼を受ける側が報酬の話を先に出すと「何と卑しい」とか思われかねない。
 そう思うのならあなたが行えば良いことである。それができないからできる人間に頼むのだ。
 なので仕事内容の依頼では、報酬額の提示は早くに行うのが良いと思う。これを以前のなあなあ式にしていると、また技術流出をしてしまうかもしれない。
 技術者は自分の技術の価値について、過小評価すること無くきちんと向き合ってみてはいかがだろうか。

 次回は、ネットスーパーのささやかな問題点について考える。