わたしの通っている透析クリニックはそれなりに大きなグループを形成しており、系列のクリニックは近所に2カ所ほど在るが、わたしの住んでいる町には存在しない。
仮にわたしが通常通っているところをAクリニック、近所にある系列病院をBクリニック、Cクリニックとする。B・CからAへの距離はほぼ同じだ。
Aクリニックでは当初、月水金に午前・午後・夜間の3シフトで行われ、火木土は午前の1シフトで行われていた。
ある土曜日、わたしは透析を終えて送迎の車をロビーで待っていたのだが、普段より多くの人が詰めている。しかも聞いたことが無い声がほとんどだ。
看護助士さんに聞いてみると、Bクリニックの入って居るビルで停電と也、そこでの透析が行えなくなったそうだ。そこで急遽Aクリニックの午後で対応することになったそうである。
ベッド数で言えばAクリニックが一番多いので、Bクリニックの土曜午前の患者さんは数時間遅れになるがきちんと透析が行えたのである。
こういうときにグループ耐性は便利であると思った。個人で透析クリニックを開いていると、もしものアクシデントに患者を別の病院に割り振るのも大変だろう。だからと言って透析を休みにするわけにもいかない。
系列病院なので患者さんのカルテも共用できている。ドライウエイトの設定に透析時間、透析中に必要な処理に最後の投薬まで把握できている。
患者さんの一時移動の他に、看護士さんや技師さんの応援もある。Cクリニックで一時的に看護士さんが足りなくなるとAクリニックから看護士さんが応援に出かけるのである。もちろんその逆もある。
基本的にAクリニックで働いている職員のみなさんは、Aクリニックの所属になっているが、それぞれのクリニックでの人材不足を補うために人員の移動はわりに行われる。
先日もAクリニックにいたN看護士さんと、CクリニックにいたB看護士さんがそれぞれ入れ替えになった。経験で言えばB看護士さんの方がベテランであり、Aクリニック側の人材不足を補うためと、それぞれの看護士さんは交代したクリニックの方が近かったらしい。
実はここ最近、クリニックでの看護士さんの応援入れ替えが頻繁に起こっている。主な原因はAクリニックの看護士さんが一時離脱したりお辞めになったことだ。常時二名不足していることになる。
その分は技師さんを増やすことで穿刺については何とか追いついて居るが、看護士さんにしかできない作業もある。わたしの足の処置もそれだ。なので看護士さんの人数はそれなりにキープする必要がある。
ここ一ヶ月ほどはあまり聞いたことが無い声の方がいらっしゃって、BクリニックやCクリニックから応援で来ているようである。それもそこそこ落ち着いたかなとか思ったとある日の透析、穿刺を行って居るときに看護士さんに聞いてみた。
「ところで、看護士さんのシャッフルは収まったんですか?」
「いえ、全然」
何故かここで異様な圧力を感じた。もしかして、触れてはいけないところに触れてしまったのか、逆鱗だったのか。
普段は物静かで落ち着いた看護士さんである。わたしが勝手に貼り付けた表情では、伏し目がちな笑顔が素敵なはずなのに、今やその両目はかっと限界まで開かれていた。その瞳の奥に、鬼が宿る。
「そもそもですね、看護師不足は今に始まったことではないのです。それなのに患者さんの受け入れだけは進んでいますので」
「一応技師さんは増えているようですけど」
「確かに穿刺は行えますが、看護師で無いと行えない業務もそれなりに多いのです(ここで静脈側の穿刺)。なので今の体勢ではまだたりません」
「募集はしているのでしょう」
「ですが給料が安いので思うように集まらないのです(ここで動脈側を穿刺)。わたしだって以前の病院と給与の水準を保証すると言われてこちらに来たのに(以下、256文字削除」
すごい、すごいラッシュだよ。普段大人しくて優しい人ほど怒らせてはいけないというが、まさしくそれ。
これはあれだ、東洋バンタム級選手権で挑戦者・矢吹丈に対してチャンピオンの金竜比飛がチョムチョムを放ったときの青白い炎のようなものか。
すっかりロープサイドにおいやられたわたしは避けることもできず、かと言ってダウンすることもゆるされない。
「踊れ、踊れびわほうし。その意識が途絶えるまで踊り続けろ」
ちなみにチョムチョムとは朝鮮語で「踊れ踊れ」という言葉らしい。
ともかく、無事穿刺は終了したので透析は始まったが、触れてはいけない言葉がわかった。以後、気を付けよう。
看護士さんにとって透析クリニックで働くと言う事は、日曜日が確実に休みになって夜勤が発生しない職場である。ただ、土曜祝日の区別が無いために家族とのスケジュール調整が難しくなる。
これらの条件から一度看護士さんを辞めてから再度職につくことが多いらしい。
それで透析患者は増えているので引く手あまたであり、給与面の待遇などからいろいろと選べるそうである。
そうなると少しでも給金の高いクリニックに行くのは必然。系列病院なので特定のクリニックの賃金だけを上げるのは難しいそうだ。
ともかく、看護士さんが居なくなることだけは避けてほしいと思った。
次回はガンプラである赤い彗星の最後の機体、サザビーの作成記録である。
仮にわたしが通常通っているところをAクリニック、近所にある系列病院をBクリニック、Cクリニックとする。B・CからAへの距離はほぼ同じだ。
Aクリニックでは当初、月水金に午前・午後・夜間の3シフトで行われ、火木土は午前の1シフトで行われていた。
ある土曜日、わたしは透析を終えて送迎の車をロビーで待っていたのだが、普段より多くの人が詰めている。しかも聞いたことが無い声がほとんどだ。
看護助士さんに聞いてみると、Bクリニックの入って居るビルで停電と也、そこでの透析が行えなくなったそうだ。そこで急遽Aクリニックの午後で対応することになったそうである。
ベッド数で言えばAクリニックが一番多いので、Bクリニックの土曜午前の患者さんは数時間遅れになるがきちんと透析が行えたのである。
こういうときにグループ耐性は便利であると思った。個人で透析クリニックを開いていると、もしものアクシデントに患者を別の病院に割り振るのも大変だろう。だからと言って透析を休みにするわけにもいかない。
系列病院なので患者さんのカルテも共用できている。ドライウエイトの設定に透析時間、透析中に必要な処理に最後の投薬まで把握できている。
患者さんの一時移動の他に、看護士さんや技師さんの応援もある。Cクリニックで一時的に看護士さんが足りなくなるとAクリニックから看護士さんが応援に出かけるのである。もちろんその逆もある。
基本的にAクリニックで働いている職員のみなさんは、Aクリニックの所属になっているが、それぞれのクリニックでの人材不足を補うために人員の移動はわりに行われる。
先日もAクリニックにいたN看護士さんと、CクリニックにいたB看護士さんがそれぞれ入れ替えになった。経験で言えばB看護士さんの方がベテランであり、Aクリニック側の人材不足を補うためと、それぞれの看護士さんは交代したクリニックの方が近かったらしい。
実はここ最近、クリニックでの看護士さんの応援入れ替えが頻繁に起こっている。主な原因はAクリニックの看護士さんが一時離脱したりお辞めになったことだ。常時二名不足していることになる。
その分は技師さんを増やすことで穿刺については何とか追いついて居るが、看護士さんにしかできない作業もある。わたしの足の処置もそれだ。なので看護士さんの人数はそれなりにキープする必要がある。
ここ一ヶ月ほどはあまり聞いたことが無い声の方がいらっしゃって、BクリニックやCクリニックから応援で来ているようである。それもそこそこ落ち着いたかなとか思ったとある日の透析、穿刺を行って居るときに看護士さんに聞いてみた。
「ところで、看護士さんのシャッフルは収まったんですか?」
「いえ、全然」
何故かここで異様な圧力を感じた。もしかして、触れてはいけないところに触れてしまったのか、逆鱗だったのか。
普段は物静かで落ち着いた看護士さんである。わたしが勝手に貼り付けた表情では、伏し目がちな笑顔が素敵なはずなのに、今やその両目はかっと限界まで開かれていた。その瞳の奥に、鬼が宿る。
「そもそもですね、看護師不足は今に始まったことではないのです。それなのに患者さんの受け入れだけは進んでいますので」
「一応技師さんは増えているようですけど」
「確かに穿刺は行えますが、看護師で無いと行えない業務もそれなりに多いのです(ここで静脈側の穿刺)。なので今の体勢ではまだたりません」
「募集はしているのでしょう」
「ですが給料が安いので思うように集まらないのです(ここで動脈側を穿刺)。わたしだって以前の病院と給与の水準を保証すると言われてこちらに来たのに(以下、256文字削除」
すごい、すごいラッシュだよ。普段大人しくて優しい人ほど怒らせてはいけないというが、まさしくそれ。
これはあれだ、東洋バンタム級選手権で挑戦者・矢吹丈に対してチャンピオンの金竜比飛がチョムチョムを放ったときの青白い炎のようなものか。
すっかりロープサイドにおいやられたわたしは避けることもできず、かと言ってダウンすることもゆるされない。
「踊れ、踊れびわほうし。その意識が途絶えるまで踊り続けろ」
ちなみにチョムチョムとは朝鮮語で「踊れ踊れ」という言葉らしい。
ともかく、無事穿刺は終了したので透析は始まったが、触れてはいけない言葉がわかった。以後、気を付けよう。
看護士さんにとって透析クリニックで働くと言う事は、日曜日が確実に休みになって夜勤が発生しない職場である。ただ、土曜祝日の区別が無いために家族とのスケジュール調整が難しくなる。
これらの条件から一度看護士さんを辞めてから再度職につくことが多いらしい。
それで透析患者は増えているので引く手あまたであり、給与面の待遇などからいろいろと選べるそうである。
そうなると少しでも給金の高いクリニックに行くのは必然。系列病院なので特定のクリニックの賃金だけを上げるのは難しいそうだ。
ともかく、看護士さんが居なくなることだけは避けてほしいと思った。
次回はガンプラである赤い彗星の最後の機体、サザビーの作成記録である。