1989年から1990年にかけてTBSの深夜に放映されていたのが「三宅裕司の『イカすバンド天国』である。略してイカ天。
 これは音楽オーディション番組で、毎週アマチュアのバンドが生演奏して勝敗を競い、その週のトップバンドが前週のトップバンドと競うことができた。ここで優勝すると次週に挑戦する権利を得て、5週連続で勝ち抜くとスタジオ録音ができるというものだった。
 有名なところではビギンやたまなどだが、その中でわたしが好きだったのが氏神一番氏が匹居るカブキロックスである。
 彼らは一種のビジュアル系になると思うが、ボーカルの氏神氏は歌舞伎の鏡獅子の装束であり、演奏していた楽曲は「お江戸」。これは沢田研二氏の「TOKIO」のパロディソングであった。
 メロディーラインはそのままだが、歌詞が江戸を彷彿とさせるものであった。
 また彼らは装束だけで無く、使う言葉も凝っており、スポンサーのことを「ご贔屓筋」と呼んでいたりしていた。独自の悪魔路線を進んでいた聖飢魔IIとコンセプトは似ていたかもしれない。
 カブキロックスはメンバーを変更しつつ現在も活動を継続しているようである。アレクサでは音楽が検索できなかったのが残念である。

 インターネットのコンテンツには、通常会話を武士言葉に変換した者がある。なにがしにござる、とかいかにもなど、独特の言い回しを用いたものだ。
 わたしは視聴していないが、今年の2月から配信が始まり、全米を始めとする世界的に話題となった「SHOGUN」だが、このドラマは日本人同士の会話は基本的に日本語で行われ、英訳文章は字幕で行われた。
 英語圏の方々は登場人物が何人であっても英語で話すものと思って居るのか字幕を極端に嫌うようである。以前のSHOGUNでは登場人物は日本人でも基本的に英語を話していた。
 ただでさえ字幕が嫌われるのに、日本語の会話についても1600年当時の武士の言葉で会話しており、普通の日本語が判る方でも読み取れないものであったようだ。
 これは脚本の段階で英語(原作の文章)→日本語に翻訳→1600年当時の日本語に変更→キャスト間での意識統一というプロセスを踏んでいたようである。
 例えば代名詞である彼、彼女や少女という言葉は当時使われていなかったという。そこが詳しく判るのは、かなり日本語に通じた人物だけだが、こういったディテールは細かく設定することに無駄は起きない。
 多くの視聴者が見る場合、ささいな不具合を見つけられる専門家もいるわけである。そこで冷めてしまわないようにしなければならないのだ。

 日本語は昭和の初期まで口語と文語が一致していなかった。その二つを一致させようとした動きがなければ海外の方々は、文章を書く上で別の日本語を学習しなければならなかっただろう。
 武士言葉は時代劇で聞くことができていたが、最近では時代劇が報じられる機会もすっかりと減少している。候文もほとんど目にすることがないために、それに触れるとしたら時代小説を読むことぐらいになっているだろう。
 独特の言い回しのある武士言葉はどこか面白く感じる。YouTubeには通常の言葉を武士言葉でなぞってみたコンテンツもある。
 YouTubeのチャンネルKYS動画研究所では、いろいろな面白動画を公開しているが、その中で『侍が唄うシリーズ』がある。
 いわゆる唄ってみた動画なのだが、歌詞にアレンジが加えられており、オリジナルな歌詞のテイストを含みつつ、いかにも侍が唄いそうな内容となっている。
 特に面白いのは以下のものだろうか。
侍が歌う『アイドル』
 これはYOASOBIのアイドルが元になっているが、曲中の究極のアイドルは恐らく織田信長、そして曲中に出てくるライバルは明智光秀あたりではないかと思わせる。
 きちんと元の歌詞のテイストを再現しており、古風な言い方とポップな曲調が実によくマッチしている。
 侍が唄うシリーズにはほかにもいろいろなヒット曲があるので、一度ご覧に鳴ってはいかがだろうか。

 次回は、突っ込まれる食事風景について考えたい。