唐突な話題になるが、初代機動戦士ガンダムの放映時、モビルスーツとモビルアーマーはどう違うのかという論議があった。
 ガンダムの作中においてモビルスーツとモビルアーマーは兵器種別の呼称であるが、どういう区分になるのかがはっきり判らなかった。しいて言えばモビルスーツを巨大化し高火力高機動性を持たせたものがモビルアーマーでアルト。つまりはモビルスーツの発展形がモビルアーマーというのだが、ならば最後はモビルスーツからモビルアーマーに置き換わっても不思議では無いはずである。
 ここでモビルスーツとモビルアーマーに分類されるものを並べて見る。
 モビルスーツはジオン群であればザクグフ、ドム、ギャン、ゲルググなど、連邦軍ならガンダム、ガンキャノン、GMなど。ガンタンクとボールは省かせていただく。
 これらの特徴としては全高が18メートルほど、外見は人型をしており小型の核融合炉をエネルギーとして稼働している。本体に組み込まれた武装もあるが、外付けでいろいろな武器や防具を使用することもできる。それらは人間の兵士が使用するもののスケールアップであったりもする。
 宇宙空間ではバーニアなどの推進剤を使用して移動するほかに、手足を動かして慣性駆動で姿勢制御する。地上では脚部を使って移動したり、ホバリング移動を行う事もある。
 モビルアーマーはジオン群のみに登場しており地上用のアッザム、水中用のブラブロ、宇宙空間用のビグロ、ザクレロ、ビグザム、特殊用途のブラウブロ、エルメスなどがある。ジオングは一応モビルスーツ扱いらしい。
 モビルアーマーの外見は統一性がなく、手足が無いものもあり、大きさもまちまちだがモビルスーツよりは巨大である。そして往々にして高火力、場合によると高機動もある。
 昨今ではYouTubeなどでガンダムのこれらの設定を考察する動画も多々ある。その中で、これらの分類を行ったものがあり、それに納得したので自分なりの解釈をふくめて説明できればと思う。

 まずモビルスーツは一人の兵士が利用できる攻撃力や機動力、防御能力を最大限に拡大した結果でアルト言うのだ。
 同じようなコンセプトでパワードスーツがある。ハインラインの原作「宇宙の戦士」で登場する人型外骨格で、大きさは人が入り込める程度、内部から手足を動かすと連動して力が倍加された外骨格の手足も動く。
 また各種武装も追加されており、個人で持てる攻撃力を増加している。機動性についてもある程度は上がっているが、主に運搬用の宇宙船などに任せている。一応総幸福なので防御力もあるが、そこまで強くない。
 これをもう少し大きくしたのが装甲騎兵ボトムズにでてくるアーマートルパーで全高は4メートル程度。こちらはそこまでハイテクではなく、とりあえず弾よけと移動手段として全ての兵士に行き渡る程度のコストで作られており、単価も乗用車並みらしい。気密も保たれて折らず宇宙空間に出るには宇宙服が必須だそうだ。
 弾よけとしての性能もしれたもので、運が悪いと銃弾が装甲をすり抜けて内部に入り込み、それでやられてしまうそうだ。
 超時空要塞マクロスに出てくるゼントラーディー群の個人用戦闘ポッドリガードも同じようなコンセプトで、とりあえず兵士が生身でいるより少しはましな移動能力と攻撃力、そして装甲性能が保たれている程度。中身を見ると判るが巨人が背中丸めてぎゅうぎゅうにおしこまれ、移動するにも攻撃するにもそのほとんどがマニュアルで普通に歩くより疲れるそうだ。
 ただ銀河中の自動工場で億単位に生産されているために、これが尽きることは無いと言う。
 これらに比べるとモビルスーツはそれなりに大きいし、堅いし、そして強い。何故に人型になっているかというと、武器を効率的に運用したり、慣性駆動で推進剤を使用すること無く移動できたりもあるが、紛らわしさもあるようだ。
 宇宙空間では遠近感がとぼしくなるため、近距離にいる人間の兵士か、少々離れているモビルスーツ化の区別が付きづらい。特に戦争開始当初は連邦軍もモビルスーツに不慣れであったために兵士が特攻をしかけてきたと思って手を抜いていたら、18メートルクラスのロボットが、それだけスケールアップされた火器で攻撃されるわけだ。
 安永航一郎氏の同人誌でこれを逆手にとったものがあり、ザクの外観に似せたノーマルスーツを作ってたくさんの人間兵士に着させて連邦の戦艦に特攻をかけるものがある。相手はとてつもない数のモビルスーツが襲ってきたと思って慌てるわけである。
 このようにモビルスーツは兵士の個人能力の拡大を意図したものというのが見解だった。

 ではモビルアーマーはどうかというと、艦船類を個人ベースで使用できるように縮小したものらしい。
 海上にせよ宇宙空間にせよ、艦船類は大出力の発電機によって絶大な攻撃力を有しており、場合によると航空機、宇宙戦闘機やモビルスーツを運用できる。
 ただ、巨大ゆえに機動力がある程度は犠牲となり、また運用には多数の兵士が必要となる。
 もしこれらの攻撃力をそのままに個人ベースに扱える程度に小型化できればどうか、それによって作られたのがモビルアーマーだというのである。なので形は人型である必要も無い。手足もおまけ程度だ。
 ビグロやザクレロは駆逐艦ベースの小型化、ビグザムは戦艦ベースの小型化といえよう。これらの形状が安定しないのはジオン群もモビルアーマーに対して開発コンセプトが定まっていなかったからかもしれない。連邦軍がモビルスーツの第一号としてガンタンクを作ったようなものだ。
 特にビグザムは時代遅れの大艦巨砲主義が具現化したようなものだ。ソロモン線駅ではそれなりの戦果を上げた者の、ガンダムに破壊されるまでもなく、ほとんどオーバーヒート寸前であり、宇宙空間では連続して30分も稼働できないと言われている。主に冷却が行えないからだ。
 ただ、ムサイの両エンジンの間にビグザムを治め、地上に落下、ジャブローで存分に暴れさせるという計画はあったらしい。地上であればある程度の冷却が行えるが、あの鳥足で巨体が支えられるかという問題もある。その時はミノフスキークラフトで移動する案も出ていたようだ。
 さてブラウブロとエルメスはコンセプトがそれなりに異なる。一応ニュータイプが扱うための特殊な機体だが、思いもしなかった場所からの複数攻撃を行うオールレンジ攻撃に特化している。
 ブラウブロは4個の砲台を優先でコントロールし、エルメスは発電機内蔵の砲台を複数遠隔で操作する。ブラウブロは優先コントロールなので砲台を一人ずつ制御すれば一般へ意志でも扱えないことはない。
 これらの真骨頂は、認識力を拡大した特殊能力を保有した兵士が、全ての砲台を一人で制御することだ。この兵士が乗る機体を親機、砲台を子機とすると、これらの組み合わせは空母と搭載機の組み合わせに似ている。
 空母には各種用途に特化した航空機が複数搭載されており、それらを任意展開することでいろいろな任務を果たすことが可能だ。その任務のなかの攻撃力特化型、そして小型化したのがブラウブロとエルメスというわけである。
 本来は搭載機にそれぞれ搭乗員が必要だが、親機の制御を特殊能力者が行う事で、搭載機のコントロールも一人で行う。まさしく一人で空母と搭載機を制御しているわけだ。
 なのでブラウブロのようにテストとは言え単艦で戦うのには無茶がある。実際の空母も防御力についてはほとんど無く、きちんと運用する場合は駆逐艦や巡洋艦、潜水艦などの艦艇が空母を守る必要がある。
 エルメスも当初はドムなどのモビルスーツが護衛についていたが、あまりの戦果に護衛を放棄してしまった。あのあとララアがいろいろと騒いだが、あれは当たり前なのである。なにしろエルメスの近接防御はほとんど無いからだ。

 このようにモビルスーツとモビルアーマーは狙いが異なっているために同型劣情の派生というわけではないというのが考察結果だった。
 もちろんこれも公式の見解では無いし、いろいろと間違っているかもしれない。
 ただ初老のガンダムを焚くの戯言と思って頂ければと思う。

 次回は、そんなお時間にお仕事ですか? という話をしたい。