ポリコレの国、アメリカで日本のマクドナルドのWEBコマーシャルが話題になっているらしい。
 内容はクリスマスにパパとママとこどもが3人、マクドナルドの商品を食べてにこやかに過ごすというものである。
 どう診てもおかしな所は無い。もしかして、無宗教が大半の日本人が、キリスト教の催事であるクリスマスを安易に祝うのがよろしくないとか、そういう宗教がらみの問題かというとそれもない。
 結局、どこがいけないのかというと、パパが男性でママが女性、こどもは二人の間に生まれた3人とも、見た目は健常者でおまけに3人とも日本人に見えると言うところらしい。
 言われても何のことやらと思うが、この古き良き時代の典型的な家族像は、それ以外の少数派の家族をないがしろにしていると言うのだそうだ。
 とりあえず、このコマーシャルは日本限定であり、海外では放映されていない。放映したら前記の騒ぎがより酷くなると思われるからだ。
 しかし、これは困ったことである。一体どういうコマーシャルを作ったらアメリカ人は納得するのか。
 そこでキャストを考えてみた。
 パパは黒人の男性、ママはスペイン系列の男性、こどもはインド系列の養子、ペットの犬は保護犬だが右の後ろ足が無い。
 これでいろいろな民族やLGBTにも配慮されたものになる、と思いきや。
「ではパパがロシア系列の女性、ママがアジア系列の男性の組み合わせは家族では無いのか」
 つまり、性別や少数派の組み合わせはどれほどあるか判らない。それらに全て合致する何かが無い限り、コマーシャルで安易に家族の団らんを魅せてはいけないということだ。
 馬鹿じゃ無いの。
 別に少数派やLGBTの家族構成を認めないと言うことではない。日本では民法で結婚の条件が男性と女性、一人ずつの組み合わせだけが認められている。結婚可能な最低年齢は男女ともに18才だ。
 この同性婚を認めていないことに限り、日本は遅れていると言うが、民法で定めているのは婚姻条件を成立させるための最低条件であり、婚姻を望まなければどんな性別の組み合わせでも法律に反することは無い。
 二青年に対しての性交は地方自治体の条例で禁止されているが、少なくとも成人通しの組み合わせにおいて、同性であっても宗教が異なっていても法律で罰せられることは無いのだ。
 それに比べると国家で宗教を統一している場合、同性通しのカップルはそれが違法となる場合もある。こちらは刑事罰にあたるようだ。
 たまに議員連中が家族構成についてもの申す場合もあるが、それの拘束力はほとんどない。
 ゆえにコマーシャルに登場する家族は、無数の組み合わせの中の1パターンにすぎない。それ以外の全てを否定する者では無いのである。
 しかしこんな事ではアメリカにおいて「サザエさん」は絶対に放映できないだろう。
 日本でさえ物議を呼ぶ昭和テイストの家族構成、両親とそのこども、長女の旦那に二人のあいだにできたこども(孫)という3世代が住んでいる一軒家で繰り広げられるが、ここに登場する7人は健常者で日本人である。カツオやマスオあたりは一部怪しいところがあるが、一般人の範疇になるだろう。
 ただ、この家庭も少々込み入った問題を抱えており、サザエとカツオ・ワカメは異母兄妹という設定があるらしい。
 これは波平が舟と結婚する前に前菜が居て死別しているが、サザエは前菜のこどもであり、カツオとワカメは舟と再婚した痕のこどもだという。
 サザエとカツオたちの年齢が離れているのはそういうことらしい。そのような設定があっても、日本のホームドラマでは出てくることが無い。
 わたしがこどもの頃は、アメリカでのホームコメディドラマが日本語吹き替えでテレビ放映されていた。キャストが何か言うと、観客の笑い声が入るあれだ。
 有名なところでは「奥様は魔女」。ただこの家族も普通の組み合わせではない。旦那さんはアメリカ人であり、奥様は外見上白人の女性だが魔法使いの一族である。
 そして二人のこどもは外見、白人の女の子だが奥様の魔法使いの血筋を受け継いでいる。
 この奥様の親戚筋が家に訪れてトラブルを起こすというものだが、確かに設定上奥様一族は魔女であるが見た目は白人である。もうこのドラマは再放送できないし、リメイクしたらどんなことになるやら。
 ポリコレは少数派閥の意見も正しく聞くことで、多様性を確保しようとするはずだが、多様性の枠を大きくすることで何もできなくなってしまう。選択肢の一つを選ぶことで、選ばれなかったその他全てを否定しているように診られるようだ。
 何だか視野を広めようとして、自分が見える範囲のもの以外を全く見なくなっているように思える。
 日本はこのような誤った選択肢を作らないようにしていかねばならぬだろう。
 今年のクリスマスも、日本風家族団らんのコマーシャルが見られますように。

 次回は、脱毛の話をしたい。