下北沢病院に入院するにあたり、直前に定期検診を受けていた東京医大病院の循環器内科の医師に言われていたことがある。
「できれば入院先の病院で、カテーテル治療を行う時に、心臓の造影剤撮影が行えないか聞いてみてください」
 カテーテル治療は何度か説明しているが、人体のやや表皮に近い位置にある動脈にポートを造り、そこに極細のワイヤーを差し込んで血管内部から各種医療処置を行うものだ。
 カテーテルの先端は手元の動作でわずかに曲がるようになっており、それを常時レントゲンで内部撮影しながら患部に誘導する。
 そこで薬品の投与、バルーンによる血管拡張、血管の萎縮を防ぐための金属製筒の設置、患部の一部の採取などが行える。
 カテーテルの誘導などにかなりの腕前が必要である。下北沢病院の副院長はこのカテーテル操作手術について日本でも有数の専門家であり、手術の実行回数ではトップクラスになる。
 下北沢病院での手術は糖尿病患者の足先絵素部分についてのものだが、長年の動脈硬化によって血量が悪くなっているために、それを確保するための血管補正手術が行われる。まずカテーテルで血液ルートを戻し、その後に患部に処置をほどこす。
 そのためカテーテル操作はほとんどのように行われている。
 カテーテルが導入されるポートは子患部か脇の下に作られる。今回は左の股間部分だった。
 そしてカテーテル血量が行われるとき、心臓の冠状動脈に異常が見られればついでに行われることが多かった。3年前の東京品川病院の場合は心臓の造影剤撮影が主目的であり、ついでに右足のかかと部分への血量確保が行われた。
 そこでカテーテルのついでに心臓の検査が行えないか、主治医に聞いてみたのだが「無理」であるそうだ。これは無理なお願いであったので、この返事には納得した。
 下北沢病院は病院のサイトによると糖尿病と足の専門病院ということで、その範囲は下半身になる。無理を言うわけにはいくまい。
 そんなわけで手術後は穏やかな日々を過ごしていたのだが、担任直前に主治医との最後の処置の時。
「先生、ここは下半身専門と聞きましたが、バネ指とかは直せますかね」
「専門というほどでも無いけど、バネ指なら注射などで何とかなると思います:
 何て凝った! なら入院したときについでに聞いておけば良かった。入院期間は4週間もあったのに。
 以前の記事にも述べたが、わたしの両手中指はバネ指という状態になっている。特に左手の中指は自分の意志で完全に折り曲げることができず、拳を握ろうとすると中指だけが中途半端に曲がってしまい、決してアメリカ当たりの方々には見せられないサインとなってしまう。
 ただ関節が固まっているわけではなく、右手で押さえると中指はきちんと曲がるし、キーボードを打つのに支障が無い。そのためにこの状態を数年間もほったらかしにしているのだし。
 しかし、中指が曲がりきらないと握力も低くなるし、面倒なことも多い。また別系列の病院にかかるのが面倒で行っていないだけだ。

 一般の病院では内科、外科、眼科眼科、耳鼻咽喉科など、そこに居る医師が得意とする分野の診察を行って居る。
 小児科は対象がこどもということと、いろいろな分野の複合的な診察が必要なために年齢層をターゲットにしているわけだ。
 ただ医師免許は一つ持っていればどの診察科目でも行う事ができる。診察科というのは本当に得意分野なのである。
 唯一歯科だけは免許が別となっている。通常の医師免許の場合、口内外科はあるが歯科技工を行う事ができない。歯科医師も内科や外科のような診察は行えない。
 下北沢病院は糖尿病から足の壊疽という症状の進行にともなって、足の指先の壊疽でも最終的に膝下からの切断になってしまうのを防ごうと、関連する診療科を併用して行って居る。
 なぜ足の指先の壊疽でふくらはぎと足後と斬ってしまうかというと、血糖のコントロールが悪い場合にぎりぎりの位置で切断しても、そこに新たに傷口ができるだけで、塞がることも無く壊疽が拡大するからである。
 そこで切除しても傷口が壊疽を起こさない位置まで心臓に近づけるのである。
 わたしの場合、右足も左足も運が良かったとしかいえない。血糖値もそこそこの状態だったこともあるが、専門家が見て居るために最小限度の切除で足の形状は保たれた。
 主治医としてはもうすこし様子を診たかったらしいが、こちらも仕事があるためにやや無理を言った。もちろん、医師の判断で無理と言われれば入院を継続するつもりだった。
 ただ、右足小指の切除後、足のカバーについてはかなりの注意をしていた。それにも関わらず左足の指も失った。
 あと2、3年したら、別の指でお世話になるかもしれない。
「先生、わたしとしては左足の小指が怪しいかと」
「そうだね、右足の人差し指もどうかと」
 担任直前にこんな会話を繰り広げたが、今度お世話になるときは、是非バネ指の診察もしてもらいたい。

 次回は、アダルトコンテンツの価値について考える。