先日、東京医大附属病院にて初めての検査を行ってきた。今まで長い入院生活を送っているが、まだまだ知らない検査は多いのだと思い知らされる。
 今回はCT撮影検査なのだが、心臓の血管がターゲットであり、造影剤を投与して行うものだった。
 段取りとしては診断のあとに心拍数を弱める薬を飲んで1時間30分ほど待機する。その後、そのままの状態で胸部のCT撮影を行う。
 ここで点滴を接続、そこからさらに心拍数を弱める薬を投入、また欠陥を広げるニトロ系列の薬を舌禍に配置、点滴から造影剤を投入してCT撮影を行う。
 例によって待機時間は長いが、CTの撮影その者は15分程度で終了する。その後は結果の判定だが、これは次回の定期検診、3月上旬に明らかになる。
 そして今回の料金は3000円程度也。これ、1割負担だから全額なら3万円にもなるのか。しかし日本ならではの料金だろうし、アメリカ当たりだとどれだけのお金が飛んで行くやら。
 やたら欠陥を拡張したり、心拍数を抑える薬を投入するので、帰りの身体の状態に不安を覚えたが、そこは問題無く帰宅できた。
 今回投入された造影剤は、通常腎臓から尿として体外に放出される。そのため、検査後の注意事項にはなるべくたくさんの水を飲んで、早く尿として出してくださいとあるが、当然透析中のわたしに大量の水を飲むことができない。
 幸い翌日は透析なので、そこでほとんど輩出されるが、造影剤の影響が残るか心配である。とりあえずは問題無く生活している。

 これまで造影剤を用いた検査はいくつか受けてきた。その中で造影剤の種類は大まかに分けて二つ。
 一つは工学的な検査手段で判りやすくするもの、簡単に言えば見た目で判る色がついているものだ。こちらの検査の種類の方が少ないかもしれない。
 わたしはまだ目が見えている時期に、眼底の血管の状態を調べるために行った。血流を判りやすくするために携行食の造影剤を静脈から注射するのだが、そのとたんに目の前が真っ赤になる。
 ああ、これが造影剤かと思いつつ、そのまま眼底の撮影を行った。撮影が終了し病室に戻ってから徐々に視界はもとにもどるのだが、どこかまだらに赤い色が残るのが気持ち悪い。気分が悪くなることはなかった。
 さて、その頃は腎臓もわりにまともに働いていたので、体内に残る造影剤は腎臓をへて膀胱に貯まる。そして尿として出るのだが、入院中のわたしは尿を採取するように言われていた。
 夜間に小便に向かうと、自分あてのステンレスカップを摂ってそこに尿を入れるのだが、それが緑の携行食に彩られて、カップの中がすごい色彩となっていた。
 鮮やかな尿は以後、二回程度続いたが、やがて普通の色合いになる。目が見えなくなった今でも、あの鮮やかな色合いは覚えている。

 そしてもう一つの造影剤は色は透明だが、検査装置には判る者になっている。CT検査であれば特定の超音波に反応したり、レントゲンであればX線に反応する成分になっているのだろう。
 いままで足と心臓のカテーテルによる造影剤投与は行われていたが、そのころには目が見えなくなっていたし、尿もほとんど出ていないのでそれらに変化があるか判らなかった。撮影後も特に身体に変化もなく、次回の透析で無事、輩出されたのだろう。
 今回は造影剤投入についていくつかの注意事項があった。一つは投入直後に全身が熱くなるような感覚を覚えること、それは薬の反応なので問題は無いということだ。
 もう一つは投入直後に気分が悪くなったのであればすぐに知らせてほしいということである。アレルギー反応などを考慮しているのだろう。
 ところが今回は、今までの造影剤投与とは異なることが起きた。
 点滴から造影剤を投与直後、わたしの鼻孔と舌に微妙な匂いと味が展開された。これは下北沢病院で透析の次にレオカーナを行った時に似ている。
 つまり、鼻孔と舌の毛細血管を通じて、造影剤の匂いと味が体内から伝わっているのである。
 そしてその匂いと味だが、まずいとしか言いようが無いものだった。
 甘いとか酸っぱいとか苦いとかしょっぱいとかのどれでもはっきりしていないのだが、ともかく苦くて不快な感じである。
 匂いはわりに早く消えたのだが、味覚は検査が終了するまで残って居た。部屋に戻る頃には無くなっていたが、体内から感じて居るので舌をぬぐったところで消えないところが面倒である。
 ここら辺は被験者で無ければ判らないのだろう。検査を行って居る方々も、別の被験者からの感想でしか理解していないようである。
 今後、まだ新しい検査を受けることもあるのだろうが、残った感覚にダイレクトに直撃するものは、あらかじめ説明してほしいと思った。

 次回は、どうしてもできない単独歩行の話である。