リン=ミンメイのデビュー曲である「わたしの彼はパイロット」は当初1曲しか無い短いものだったが、その後二曲目が作られ、それはサウンドトラックなどに収録されているものの、わたしが覚えているのは1曲目だけである。
 さて、パイロットと言うとかなり特殊な職業と言える。主に民間航空機のものと軍事用の航空機のものだが、わたしの親戚に航空自衛隊のヘリコプターのパイロットを旦那さんに持った方が居た。
 その方の目論見としては、自衛隊でそれなりの経験をつみつつ、退役後は民間会社に入ってパイロットを継続する予定だったようだ。ただ、視力が落ちたことからパイロットの継続は難しくなったようだ。
 空を飛ぶパイロットと言うと宇宙船のパイロットも含まれるが、これは世界中でも極端に数が少なくなる。ほとんどの宇宙機は操縦をコンピューターによって制御されているが、非常事態に対応するために手動の操縦手段は備えている。それも無重力に近く大気の存在しない宇宙空間での三次元操縦のために、一般の航空機に比べてかなり難しいらしい。ヘリコプターを少し難しくした程度だと言う話だが、航空機の中でもヘリコプターやVTOLの操縦がそれなりに難しいことを考えれば判るかもしれない。
 それはさておき。今ではさほど聞かないが、以前は結婚詐欺を働く男が自慢する職業と言えば、アメリカ空軍でパイロットをしているというのがそれなりに多かった。
 その詐欺師は礼服らしい軍服に身を包んでいるが、左滑には各種勲章が飾られており、男前も相まってかなり格好良く見えるようだ。女性の結婚詐欺師は美人で無い場合が多いと言うが、男性の場合は見栄えと建前上の資本力が幅をきかすのだろう。
 詐欺罪は罰金刑が無いので、有罪となると禁固刑が言い渡される。執行猶予が言い渡される場合があるが、表だってニュースになるような詐欺師は大型案件なので、初犯でも実刑を食らうようである。
 一応断っておくと、わたしは詐欺にあったことも、詐欺を行ったことも無い。嘘をついて人を欺すことはあっても、そこから実利を得るようなことはしていないつもりである。
 手短な詐欺というと以前は先物取引に勧誘するなどであった。
 それらの勧誘は主に会社にかかってくる電話で行われていた。それもタイミングが夏や冬の賞与が出る時を狙っている。
 主に係長や課長などの金を持っていそうな中間管理職が狙われており、昼食後のややけだるい時間帯に知人を自称した電話がくる。つまり、判断力がある程度低下したところを狙うのだろう。
 ここで注意しなければならないのは、直属の上司の視線である。電話の内容は聞こえてこないが、受け答えテイル返事で勧誘のものだとはある程度予想できる。
 これらの対応に時間がかかるということは、会社での給料への不満があるか、優柔不断のどちらかと言える。そんなことに手間取っている部下の評価が下がるのである。
 どんな美味しい勧誘電話でも、会社にかけてくるようなものは無礼千万「いらぬ」の一言で電話を切るのが正しい対応なのだろう。
 わたしの居る部署に面白い男がいて、勧誘電話に対して新聞を取り上げるとそこに書いてあったニュースを読み上げ始めた。別に詐欺師のニュースだけで無く一般的な事件のそれを延々と話し始める。すると相手の電話はすぐに切れるそうである。危ない人に電話をかけたと思うのだろう。
 最近では電話勧誘も減っているようである。その代わりにメールによる勧誘はそこそこ残っている。
 インターネットが普及し、個人がサイトを持つようになると、そこに個人的な連絡用のメールアドレスを表記することがある。
 サイトの内容からおおよその個人プロフィールを確認し、そこに引っかかりそうな勧誘メールを送るようである。わたしも以前に個人サイトを開設していたが、そこに表記した個人メールアドレスには、必要なメールの数十倍の勧誘メールが届いたものである。
 メールはタイトルを読んで重要性を図っているのだが、相手も詐欺師、なかなか興味を引くタイトルを打ち出してくる。
 その中で引っかかりそうになったのがRE詐欺というもので、例えば「RE: 連絡事項に不備がありましたので送ります」とか、いかにも取引相手から届きそうなタイトルを偽装している場合だ。
 特にシステムを構築中だったりすると、それらに条件反射で中身を確認する。しかし、読んでみると勧誘だと判る。
 会社の定型分としては、「お疲れさまです、○○です」が文頭に来ることが多いがそれらが無い。「以下のURLにアクセスして状況確認をよろしくお願いします」と書いてある。そのURLのドメインには見覚えが無く、ここに来て差出人のメールアドレスが全く知らない人のもので、ようやく詐欺と気が付くのだ。
 また、面白い詐欺メールに、差出人が自分であったことだ。つまり、差出人と受取人のメールアドレスが同じなのだ。
 差出人の情報は、本当の差出人のメールアドレスとは別にメールのヘッダ情報のFrom:フィールドで自由に登録出来る。
 自分で自分を欺す詐欺メールも気持ち悪いものだ。
 明らかに詐欺なのだがタイトルが面白くてつい中身を見てしまったものもある。そのタイトルは「主人がアリクイに食い殺されてすでに3年が過ぎました」である。
 どうやら美人局のメールなのだが、アリクイに食い殺される場面がそう簡単に想像出来ない。このアリクイメールもそれなりに有名だったようである。

 詐欺関係はある程度相手を選ぶというのか、金融関係の詐欺については貧乏人がターゲットに選ばれることはほとんどない。各種投資詐欺案件は生活に余裕があり、少額でも金が運用に回せる人物のもとに訪れる。
 そのため中間管理職のところに来るのだろう。わたしのところにもたまに来ていたのだが、目が見えなくなってからはこなくなった。どこでその情報を仕入れているのかが怖いばかりだ。
 これから先訪れるとしたら、定年退職にともなって退職金を狙ってのものだろう。残念だが、わたしの務めている会社では、退職金は給料に含まれるので出ません。
 今後巧妙になる詐欺の手順だが、気を付けなければならないのは自分は欺されないという自信であろう。いつでもどこでも欺される機会はある、そう思って気を引き締めなければならない。

 次回は流行りの会話型AIについて語る。