透析中にトイレに行きたくなったらどうするか、意外と発生する事案である。
 透析を始めたばかりの人の場合、ほぼ一般人と同じ分量の尿が出る。そこで四時間透析はそれなりの長丁場であり、タイミングが悪いと透析中に尿意を覚えることがある。
 ほぼ尿が出なくなった場合でも、お腹の調子が悪く便意を覚えることがある。こちらの方が必死度が高いかもしれない。わたしの場合はほとんどがこれにあたる。
 あらかじめおむつのようなものを穿いて透析を行う事もあるが、透析中であってもトイレに離席するための手段は準備されている。今回はそれを説明できればと思う。

 まずトイレに移動するまでの手順だが、患者さんがナースコールなどで職員さんを呼び出すところから始まる。
 離席する前に血圧測定を行い、補液と言って100から200グラムの水分を身体に戻す。
 その後ダイヤライザーと人体との回路を切断するが、穿刺に用いた針はシャントに留置したままにし、針が外部に振れないようにシートで覆う。
 ダイアライザーには患者さんの血液が残っているが、停止したままだと血液が凝固するために静脈側と動脈側を直結し、ダイアライザーを動かし続ける。血液が循環していれば内部で凝固することは無くなる。
 患者さんは車いすで移動し、トイレの前に体重測定を行う。これらの処理のために5分以上はかかることになる。
 その後トイレに入るが、利用後はまず体重測定を行う。
 そして自分のベッドに戻るとダイアライザーとの回路を復活し、透析を再開する。
 ここで重要なのはトイレに行く前の体重と、トイレを終えてからの体重の差分、そして補液としてどれほどの水分を入れたかである。
 例えばドライウエイトが60キログラムの患者さんが今回は2キログラムの除水予定だったとする。
 透析開始後1時間でトイレに離席したが、補液は100グラム、その時の体重は61.6キログラムだった。これは透析前の体重62キログラム-1時間の除水で500グラム+100グラムの補液である。
 トイレから戻った体重は61.3キログラムで所要時間は15分だった。残りは2時間と45分、残りの除水は1.3キログラムなので1時間あたりの除水は約470グラム。当初の除水は1時間あたり500グラムなので再度調整の必要がないと思われそのまま実行する。
 その後は透析を再開するが、ここで注意しなければならないのは、透析を15分中断しても、透析終了時間の変更は無いことだ。つまりトイレに離席していた時間はそのまま透析されなかった時間となる。
 なのでトイレに離席しても、何も出なかったり体重があまり減らないと、後の除水量が多くなる。
 先ほどの例でトイレ語の体重が61.5キログラムの時、1時間当たりの除水量は約545グラムとなり、当初の除水比率より高くなる。この比率があまりに大きく変化する場合、総合的な除水量を減らすことで身体の負担を小さくしなければならない。
 また透析開始後どれほどでトイレに離席するかでも大きく変わってくる。
 例えば先ほどの例で透析開始後3時間が経過していると、トイレ前の体重は60.6キログラム、トイレ語の体重を60.5キログラムとすると、のちの除水比率は1時間あたり約666グラムとなり、開始1時間の時より比率が大きくなる。
 なのでお腹の不調などでトイレに行くときは、我慢せずになるべく早く離席するのが良い。一番良いのは透析を開始する前に全部出してしまうことだ。

 以上は透析中にトイレに行く場合のことだが、通常4時間動くことができない環境ではいろいろなことが起きる。
 さらにダイアライザーと接続している部分は動かすことができない。シャントは通常利き腕と反対の腕に作られるが、シャントも一生使うことが出来ず、時間経過とともに劣化するために利き腕の反対→利き腕→足と作れるところに移動する。特に足にシャントを作ると動きがかなり制限されることになる。
 わたしは一度、シャント閉塞で首の右側にカテーテルを刺していたときがあった。別にそこが痛むことも無いが、見た目と夜、寝るときに注意が必要なこと以外はダイアライザーとの接続も簡単でわりに透析中も自由に身体が動かせた。
 ただ、身体に直接管が刺さっていることもあり、感染症の防止から2週間の留置が限界だった。
 わたしの場合、左腕にシャントがあるために透析中は左腕の自由は全く無くなる。ときどき寝返りを打つこともあるが、左側にひねることがあっても、右側にはひねれない。
 透析を何年か行って居ると4時間の態勢はそこまできつく無くなるし、痛めることの多い腰回りには、低反発の小型座布団を引いて防御している。
 ともかく残りの人生、腎臓を移植するか、埋め込み型人工腎臓ができるまではこの生活を続けなければならない。身体がそれに慣れるしかないのである。
 なのでみなさん、今のうちから腎臓は大切にしましょう。

 次回は睡眠が継続しない話をしたい。