・水色・水色・水色・水色・水色・水色・水色・


「あれ? 兄さん どうしたのかな?」
いつもならすぐするのに 兄さんはしなかった。

「レオ!今日は レオからやってみよう。」
「えっ? 兄さんが先じゃなくていいの?」
「1番にやりたいんだろ?
いつも がんばっているごほうびさ。
この人の いっていることわかるかい?」
「うん!わかるよ!お手っていってる!
ぼくの得意なお手だよね?」
「そうだ! レオ お手できるよな。
兄さんに見せてくれよ!」
「うん!」
ぼくは お手をした。

「わぁ かわいい!この子にしよう!」
ぼくは 大きな腕に抱えられた。
「兄さん もう会えないの?」
「そんなことないさ。この公園で会える。
また会える。
レオ!いたずらしないで 
いい子にするんだぞ。
一生懸命聞けば 
人間の言葉も いつかわかるようになる。
レオ!今のお手上手だったぞ!」
「ほんと? えへへ。
ぼくがんばるよ。兄さんまたね。」
「またね レオ。」
公園には ぼくと黒い影の人が残った。
なんだか怖かった。

「お手! おぉ~ お前もできるじゃないか。
さぁ 行こう!」
そういって ぼくの腕を乱暴につかんで持ち上げた。
腕が ちぎれそうに痛かった。


・水色・水色・


兄さんと別れてから 泣いてばかりだった。
そんな時 新しいパパは
ぼくを抱きあげ やさしく頭をなでてくれた。
新しいママは マフラーを編んでくれた。
おいしい ごはんをもらって
一緒に遊んだり お散歩に行ったり 
毎日 楽しく過ごした。
ぼくは いつのまにか泣かなくなっていた。

兄さんに いわれたとおり
新しいパパとママの いうことを聞いて
いい子にがんばった。
いい子にしていると パパとママは
いっぱいほめて 笑ってくれた。

パパとママが笑うとうれしくなった。
パパとママを たくさん喜ばせたくて
一生懸命話を聞いた。
そうすると 兄さんのように
人間の言葉がわかるようになってきた。
こんなぼくを 兄さんはきっとほめてくれる。
早く 兄さんに会いたいな。
でも 兄さんには会えなかった。
毎日 公園で兄さんをさがしたけれど
会えなかった。
兄さん 元気かな?


・水色・水色・


ある日 公園に行くと
ぼくの好きなブルドーザーが消えていた。
景色が変わった公園を見ていると
なつかしいにおいがした。
これは 兄さんのにおいだ。

どこからにおうんだ?
こっちかな?あっちかな?

すると ブルドーザーがあった場所の
向こうの家に兄さんを見つけた。

「兄さん!!!」
ぼくは かけ出した。
次の瞬間
兄さんは 壁にたたきつけられた。

「おいで!」
呼ばれて 飼い主のもとにいく兄さん。
ボールのようにけられ 宙を舞った。

なんども呼ばれ なんどもけられ
なんども宙を舞い 壁にたたきつけられた。


・水色・水色・


「やめて!
なんでそんなことをするんだ!
やめて!! やめてよ!!!」

石が飛んできた。

「レオ!あぶない!にげろ!」
ぼくはにげた。

うしろで大きな音がした。
兄さんの悲鳴が聞こえた。
ぼくは 怖くて怖くて 
振り返ることができなかった。
夜になっても 
兄さんが心配でねむれなかった。
「兄さん……。」

こっそり 家をぬけ出して
兄さんのもとにむかった。


・水色・水色・


「兄さん……。」

兄さんは 体を引きずりながら近づいて
そっと 窓をあけてくれた。

「レオ 一人できたのか?
ダメだぞ パパとママが心配するじゃないか。」

兄さんの顔を見てギョッとした。
目は腫れあがり 血がにじみ
足は 変な形をしていた。

「兄さんは大丈夫だから 早くお帰り。
そうだレオ!いいものがあるんだ!
すごいだろ!」
そういって ボロボロの骨をくれた。
「お腹がすいたときに 食べたらいい。
気をつけて 帰るんだぞ。」
兄さんは いつまでもぼくを見送ってくれた。
ぼくは毎日 兄さんを公園から見守った。
兄さんは いつも家の中にいて
外に 出て来ることはなかった。 
兄さんは 
ぼくを見つけるとうれしそうに笑ってくれた。
けれど 日に日に弱って 動かなくなっていった。

ある寒い日。
兄さんは 家の中ではなく庭にいた。
こっそり近づいたぼくに
うれしそうにほほえんだ。

兄さんは くさかった。
体にウンチやおしっこがいっぱいついていた。
ぼくより大きかった兄さん。
今は ぼくより細く小さくなっていた。
震える兄さんにマフラーを巻いてあげた。
「ありがとう レ……オ……。」
力ない兄さんの声がかすかに聞こえた。


・水色・水色・


しばらくすると 兄さんの家に車がとまった。
兄さんは車に乗せられ 
どこかに連れて行かれるようだった。

公園の友だちが ざわめきはじめた。
「あの車に乗せられたら
保健所で殺処分されちゃうんだ…」 
「冷たい部屋に入れられて
息が苦しくなって死んじゃうんだ!」
「 "苦しいよぉ助けて!"  って
死んでいった仲間の声が忘れられないよ。
俺 殺されそうになったけど
今のご主人様が助けてくれたんだ。 」

車は静かに動きだした。

「兄さんが死んじゃう? いやだ! いやだ!」
ぼくは 柵を乗り越え車を追いかけた。
「兄さん! 兄さん!」
「兄さん! 兄さん!」 
ぼくは 必死に車を追いかけた。
車はどんどん遠くなった。

「レオ! 戻って!」
ママの叫ぶ声が聞こえた。

赤いマフラーは 悲しげに揺れ
兄さんを乗せた車は
やがて小さく見えなくなった。

兄さんが殺されてしまう……。
ぼくは悲しくて涙が止まらなかった。

心配して パパとママが大好物のお肉を焼いてくれた。
こういうお肉 兄さんは食べたことあるのかな?
ボロボロの骨を大事にしていた
痩せた兄さんの姿が浮かんだ。

兄さんに食べさせてあげたい。
「兄さん……。」
ぼくは 兄さんからもらった骨を握りしめた。


・水色・水色・


パパとママが ぼくに話しかけた。
「むかえに行こう!」そう いった。
でも 初めて聞く言葉でよくわからなかった。
ぼくは 病気をした時のように 
元気が出なくなってしまった。
病院にお薬をもらいに行くのかな?
でも 病院に行っても治らないのはわかっていた。
ぼくに必要なのは兄さんなんだ。

車がとまった。
病院じゃない。
はじめてくる場所だ。
どこだろう……。
どのくらい待っただろう……。
頭の上から声が聞こえた。

「レオ!」
この声は……

「兄さん?
兄さんの声だ! ぼくの兄さんだ!」

みんなで家に帰った。
「レオ この家のこと 
兄さんに教えてあげるんだぞ!」
パパがぼくに そういった。

「今日から うちの子だよ! よろしくね。」
新しく編んだマフラーを巻きながら
ママは兄さんにあいさつした。
今日から ぼくたちは家族だね。


・水色・水色・


「ようこそ 兄さん!
たくさん食べて 早く元気になってね」
ぼくは 兄さんの大好きな骨をあげた。

「元気になったら 一緒にてんとう虫を追いかけよう!」

この家では ぼくが先住犬。
今度は ぼくが兄さんを守るよ。

ぼくは 小さくなった兄さんをぎゅーっと抱きしめた。
あの夜 兄さんがしてくれたように……。
お わ り


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