父が悪性リンパ腫になった時に、母のかかりつけ医だった先生に
「父が悪性リンパ腫になっちゃった」と話したことがあります。
「あぁ、リンパ腫なら抗がん剤を投与すれば治るから大丈夫だよ」
という答えを残し、忙しそうに帰って行きました。
半月後、その医院に行った時、先生の雰囲気がガラッと変っていたのでビックリ。
元々先生は優しい方なのですが、どこか厳しさを持った雰囲気のある方で、
それが、更に優しく、本当に柔和な表情で、厳しさが全く消えていました。
父に「あんな先生見た事無い。驚いた」と言うと「何か良い事でもあったのだろう」と父。
そして数日後「先生の都合が悪くなったので、他にかかりつけ医を探して下さい」
と医院の看護師さんから連絡が入りました。
りんは静岡の地理に詳しくないので入院中の父にすぐ相談。
父は何件かの病院を教えてくれた後、
「昨日、あの先生をレントゲン室の前で見掛けたけど、何かの病気なんじゃないか?」
と言ったのです。「このフロアでも見掛けたし、同じ様な病気かもしれないな」とも。
父の入院している病棟は血液内科で、隣が呼吸器科。
はっきりした事が分からないまま、母のかかりつけ医は違う病院にお願いしました。
それから2ヶ月程経ったある日、その先生が亡くなったとの知らせが…
肺ガンだったとの事。思うに末期だったのではないでしょうか。
父も、その後しばらくして亡くりましたが、
さすがに病床の父には先生が亡くなった事は話せませんでした。
父のリンパ腫に対して大丈夫と、キビキビ答えた先生と、
あの柔和な表情の先生は同一人物とは思えない程のギャップがあり、
「人は、こんな短期間でこんなに変るものなのか」と時々優しい表情を思い出します。
先生の、あの柔和な優しい表情は医者だから出来たのでしょうか?
それとも、1人の人間として何かを悟って、あの表情になったのでしょうか?
本当の事は先生本人にしか分からないのだろうけれど、
私自身の余命があと少しだと知った時、あんなに優しい顔が出来るだろうか・・・
大切な人を優しい愛情で包んであげられるだろうか・・・と考えたりしますよ。先生。
そして、沢山の人の健康を守り、命を助けて来た先生。ありがとうございました。