サクラの木⑤(完)しばらく経った年の春、栄輔は 初めて美沙を撮影した河原に来ていた。サクラの木は葉桜となり、花びらが石の上に散っていた。栄輔は 河原に座り、灰皿を出し 煙草をふかした。手に持っていた 鞄を傍に置き、溜め息をついた 。栄輔はサラリーマンとなり、もう5年が過ぎた。美沙は どうしているのだろうか。美沙のことを久しぶりに思い出した。栄輔は、映画への夢を棄てた。もうあの頃に戻ることはない。忘れよう。栄輔は川面を見つめて煙草を消した。(うちの大学、今度はケツメイシ呼んだらしい)