大出監督は、酒で多少大らかになっていて、テレ朝のクルーの申し出に快諾した
前回のイスタンブール五輪で、男子マラソン金メダリストのチェヨンは
いや、今回の銅メダルは前回の金メダルより嬉しいメダル、だと言い切った
隣から、新開がチェヨンに
ひょん、そんな事言ったら、韓国の方々が、と小声でたしなめたら、チェヨンは
新開、俺の本心なんだよ…
大きめな声で言った
同じ銅メダリストの新開は黙ってしまった
まさか、マラソンで４つメダル貰えるなんてねえ、考えてませんでしたよ
まさか３位同着なんてね
大出監督はテンションが高く、４つのメダルを首から提げていた
インタビューは更に続いた
新開のインタビューが済み、銀メダリストの秀俊の番になった
いや、悔しいです
悔しくてたまりませんが、金メダルが三ツ境なら、心が和らぎます
と心境を言った
秀俊も色々話を聞かれた
僕は愛してる妻がいます
あそこに
彼女がいるから、頑張れたんだと思います
チェファがその瞬間映った
チェファはびっくりした
最後に金メダリストの聡の番になった
僕も秀俊くんとあまり変わりません
大好きな妻がいたから、妻のために走ろうと考えたのです
綾奈がパーンされた
綾奈は左手にスイーツを持っていた
その時、赤水に別のコーチがやってきて
あのー、赤水さん、５位のイムヨンソクくんがやって来ましたよ
見たら隅っこにイムヨンソクがいた
赤水はヨンソクの場所に行った
ヨンソクくん、どうしたの？
と、赤水は尋ねた
あのー、出来るなら、チーム佐賀に移籍したくて…
チェヨンさんや聡くんまで勧めてくれて…
出来れば入部したいのですが…
韓国側は、チーム佐賀に入っても了承すると…
え？
赤水は少し驚いた
インタビューはまだ続いてる
赤水はヨンソクとしばらく話していた
監督、ちょっと…
赤水はうっかりして、普段通りインタビューしている監督に話しかけた
え？何？
カメラがヨンソクと赤水をパーンした
あ！やっべー！
うっかりして
結局、５位のイムヨンソクまで通訳付きでインタビューされた
ヨンソクは
最後、あんな凄いスパートの掛け合いになるなんて、考えてませんでした
今の僕には４人みたくは出来ません
是非ともチーム佐賀に入りたい、と…
と、韓国語で言った
みんな、韓国語で話しかけてくれるなんて思いもしませんでした
僕も三ツ境くんや秀俊くん新開くんそしてパクヂェヨン先輩みたいに強くなりたい、と
来ないか、と勧められまして
韓国側のOKサインが貰えたから、伺いました
チェヨン先輩という金メダリストがいらっしゃるのは心強いと感じてもいまして…
そんなヨンソクに大出監督は入部を快諾した
ヨンソクくん、まず日本語は使えた方が良いから、個人レッスンを受けること
そして大事な物は全て置いてこい
部屋が今無いから、急遽作る
監督はそう言った
ヨンソクはようやく笑顔になった
新開たちは
同じ歳なんでしょ、バンマルで話していいよ、とか
俺、韓国好きだから、とか、韓国語を使った
ヨンソクは恐縮したが、喜んでいた
テレ朝の人々は、何だか面白い場面に出くわしたな、と、笑っていた
時間より放送は延びて、テレ朝のクルーはニコニコして帰って行った
ヨンソク、時間あるなら、少し話そうよ、と聡は言った
男子マラソンは
上位４人が、２時間５分台
５位ヨンソクが、６分台
６位以降は、２時間13分台以降だった
チーム佐賀の面々は、聡たち綾奈たちが韓国語で、他の人間が通訳付きで話をした
ヨンソクはすぐに馴染んだ
この事も新聞には大きく報じられた