、午前8時にスタートした
最初のうちは、ペースメーカーに任せろ、秀俊
25kmまではジョッグする感覚で行け
ペースメーカーが離れたら勝負だ
秀俊は一昨日やってきた大出監督に、そうアドバイスされて、集団の後方にいた
よし!いいぞ
あの位置なら、前が良く見える
KBSが生中継をしている
5km14分55秒のペースで行けとペースメーカーには頼んだようです
それはまた速いペースで行くんですねえ
優勝候補の一人、日本の鹿島選手の姿は見えませんねえ
ああ、あの韓国語が話せる選手ですね
そういえば、見えませんな
大出監督は、競技場のコーチ室にいて、秀俊の姿が見えたのを確認した
よし!いいぞ
姿が消えてる
良い走りだ
大出監督は喜んでいた
あのう、監督、久留米のブリヂストンが、うちのスポンサーになったら、横浜タイヤがチェルシーのメインスポンサーになったらしいですよ
大出監督に着いてきたコーチの東原が、そう言った
東原くん、横浜タイヤはグッドイヤーとかには負けたくないんだよ
ブリヂストンは関係ないよ
うちには軽く出してくれたから
まだ部員は8人しかいないし
来年も良い選手が入る予定ですからね
佐賀ランナーズクラブには
ああ、まだこれからだ
実業団には出来ない事を、うちは出来るんだから
大出監督は東原へ、自分に言い聞かせるように言った
うちはプロだからな
10km、29分43秒だそうです
うーん、少しだけ速いってとこだな
まあ、秀俊なら大丈夫だろ
この時点で、ペースについて行けない選手が続出し、先頭集団は20人になっていた
実況アナウンサーが言った
ああ、あそこに鹿島選手がいますよ
一番後方ぐらいでしょうか
不気味ですねえ
鹿島選手は好調なんでしょうね
マラソン解説のシムさんは、そう言った
あー、シムさん、あそこに鹿島選手の応援団がいますよ!
あ、ホントだ
あの女性が、鹿島選手のフィアンセですか
可愛い方ですね
ギョンヨンがチャンゴを叩きながら応援していた
いずみは韓服を着ていて声を上げていた
まだまだゆっくり行きなさい、とチェファは韓国語をプラカードに出し応援していた
秀俊は右手で応援団の方々に合図した
歓声がどっと湧いた

おいおい、8時過ぎてるぜ
早くSTSつけようぜ
ソウル国際マラソン始まってるぞ
聡がトレーニングから、帰ってきた
ガットゥギをボリボリ食べていた新開が
何?8時からだったの?
時間間違えてた
と、慌ててテレビを見始めた
綾奈も鏡も時間を間違えてた
ふう、まだ15kmか
良かった…
随分速いペースで行くのね
15km44分26秒って、余程力がないとダメだよ
先頭集団8人しか、残ってない
秀俊には楽なようだが
そうね、秀俊、余裕ね
これは、このまま行くとゴールが楽しみになってくる…

よし!
26kmに着いたぞ
ヒョンジュンくんが良く案内してくれた
ありがとう
おっぱ、チャンゴ上手いね
感心しながら見てた、さっき
いずみがうっとりしたように言った
韓国男児だからな、一応出来るよ
今は九州男児だから、少し間違えたけど
いえ、おっぱは凄く上手ですよ
サークルでやってらしたんですか?
いや、大学時代はボクシングやってたんだよ
チャンゴとはまるで関係ないでしょ(笑)
え?
ボクシング?
チェファは驚いていた
いずみが、チェファに言った
夜とか遅い時間帯にうちに帰る時は、おっぱにボディガード頼みなさい
強いよ、おっぱは


どんどん、選手が遅れて行きますね
シムさん
そうですね、もう鹿島選手とペースメーカーとエチオピアのゲブレマドヒン選手と韓国のポン選手しかいませんね、先頭集団には
ポン選手は良く我慢してますね
最高タイムは2時間12分44秒なんですが、
ペースに乗っかっちゃいましたね
ゲブレマドヒン選手は、2時間07分21秒なんですが、鹿島選手が持ちタイムでは一番速いです
青山学院を卒業したばかりだそうで
何?
青山学院なんですか?
日本では4番目の大学なんですね、鹿島選手は
凄いですよー!
解説のシムチャンソクさんは、大きな勘違いをしているのだが、韓国では地方の国立とか私立大学を、劣る大学と見ている
韓国ではソウルにある大学以外は、大学ではないと見る傾向があるから
名古屋大や九州大や東北大に行く学生が優秀だと思ってないみたいだ
韓国の人々は、青山学院がプロテスタントでは一番目なんで、凄い扱いをなさる
そして、ペースメーカーは、25kmで離れる予定だが、間もなく25kmである
予定通りペーサーは離れた
一気に秀俊がスパートをかけた
ポン選手はついて行こうとするが、ゲブレマドヒン選手にはついて行けるスパートではなかった
ポン選手もやや遅れ気味だが、懸命に走る
何だ?
ポン選手って人は
初めて聞いたが
おっぱ、秀俊が来るよ!
秀俊ー!
いずみは、叫んだ
いかん、チャンゴを叩かないと!
秀俊ー!あと少しの我慢だよー!
チェファの高校の同級生たちは、秀俊コールを送った
秀俊は、それでまたスピードを上げた
ポン選手にも応援してあげようか
ポン選手は秀俊から、100m離れている
ポンジュヒョン!ポンジュヒョン!
蚕室へ行くぞ!
みんな
ギョンヨンの合図と共に、一行は地下鉄駅に走って行った

秀俊は歓声に迎えられ、あと100mでゴールインする
今、ゴールしました
2時間04分46秒!
鹿島選手強いですね
レベル違うなあ
2位はポン選手のようですが、自己最高タイムを出しそうですね
8分台ぐらいのペースで行きます
3位のカニザレス選手がポン選手と1分離れてるようです
あ、フィアンセが!
秀俊に、チェファが抱きついてる場面が、韓国中に流れた
それを見て、実南はテレビがある部屋から無言で、出て行った
くそっ!見てろ
段々愛しい気持ちから、憎悪と変わって行った