そのサン・テグ・ジュペリの『星の王子様』も宮澤賢治も読んだことがなかったアキヒロは
「へえ、サリンジャーか。難しい本読むね」
と司書の先生に言われ 調子づいた
褒美にもらった先生の赤い手袋を 一度仏壇に捧げ それから冬になると 大事な手袋をはめて 練習にも来ていた
アキヒロは地肩が強く 外野を守り チームの次期エースとしても時々マウンドへ上がってた
クレヴァーなマンソンは 5年になるとショートからキャッチャに回された
「えー?ショートやりたかったなあ」
マンソンは珍しく不満をもらした
ショートをやりたがってただけに肩はやはり強く それに動きも俊敏だ
「座って受けたこたないよ」
そしてそのまま 僕たちは中学へ進学した