こちらの続きです。
3ヶ月が経った。
凌亮の休日はほぼ自分の部屋に引きこもりの生活だった。
奥さんたちも凌亮を腫れ物扱いで、声も掛けてこないのは良いけれど、もちろん家族団欒の場に凌亮が加わることはない。
お昼は食べず、夜は家の人たちの声が聞こえなくなったのを確認してから階下に降りて適当に食事を済ませているようだった。
そんな生活はさすがに精神的に来たみたいだが、それはそうだろう。
だから離婚がはっきりする前に別居するものなのではないかと思ったし、無理してその家に住み続けていることが誰のためになっているのか、私には理解できなかった。
そんなこともあって、ようやく
「そろそろ出ていく準備ができた」
と凌亮が言った。
『奥さんが仕事に就いてある程度お金が貯まったら』
『離婚に反対する娘の気持ちが落ち着くまでは』
そんなことを言ってすぐに出ていくことはしなかったけれど、3ヶ月経って奥さんが仕事に就いたということだろうか。
娘の気持ちに変化があったのだろうか。
どう『準備ができた』のか、色々聞きたかったけど、
私はもう凌亮の家族のことに関与するのはやめたから、
「そうなの?」
それしか言わなかった。
「唯と部屋を探したい」
お金の不安はあるけれど、今度は出ていくことに意欲的になった凌亮。
会社の方面で住むところを見つけたいという希望の他には、私と料理できるぐらいのキッチンの広さを希望していた。
あとは最寄駅から徒歩10分圏内。
大型家電も揃えなきゃいけないし、
「100万ぐらい必要かな?」
と凌亮は私に聞いてきた。
ワンルームそこそこの部屋の準備にそこまでは掛からないとは思うけど、それでも相当な準備金は必要で、私は旅行に行きたいと思っていたけどそんなところにお金を使ってる時ではないのはわかった。
3ヶ月前肩透かしな『決着』を告げられたから、私は凌亮の言葉に先走って期待してはいけないと自制している。
凌亮が本格的に動き出すのを見届けてからかな…と冷静に思いつつも、少しだけ話が具体的になったことで、家に帰ってから物件探しをしてしまう矛盾。
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