Chapter _ 11 警察庁からの呼び出し

 

けたたましく鳴り響く電話に目を落とすと、見覚えのない番号だった。

 

「もしもし」

 

「はい、こんにちは。こちらは釜山警察署の担当、イ・ウィヒョンと申します」

 

「あ、はい。こんにちは。釜山警察署から、どのようなご用件でしょうか……」

 

「実はですね。以前、あなた方が解決された事件がありましたよね。
警察では当初、自殺として結論づけていた件です」

 

「はい、把握しています。私たちのサークルで解決しました。
ですが、あの事件はすでに終結したと聞いていますが……?」

 

「はい。その件ではありません。
釜山警察庁長官が、ぜひ直接お話ししたいことがあるとのことで、ご連絡差し上げました。
今週の土曜日、サークルの皆さんとご一緒にお越しいただくことは可能でしょうか?」

 

「一度、確認してみないと分かりません。
サークルのメンバーに都合を聞いてから、改めてご連絡します」

 

「ありがとうございます。できるだけ早めにお知らせいただけますと助かります」

 

「分かりました」

 

通話が切れ、ジュヨルはメッセンジャーアプリを開いた。
サークルのグループチャットはスマートフォンのかなり下の方に埋もれており、探すのに少し手間取った。

 

【先輩方、お久しぶりです。
皆さんお元気でしょうか。
実は、釜山警察庁長官が私たちにお会いしたいとのことで連絡をいただきました。
今週の土曜日、ご都合はいかがでしょうか?】

 

メッセージを送ると、返事はすぐに返ってきた。
内容はほとんど同じで、
「なぜ呼ばれるのか分からないが、時間を調整してみる」
「参加は可能だと思う」
といったものだった。

 

全員の参加が可能だと確認したジュヨルは、すぐに警察庁長官の担当者へ返信した。

 

【先ほどご連絡いただきました、ハン・ジュヨルです。
ご相談の件につきまして、全員参加可能となりました】

 

メッセージを送信し、ジュヨルは再び講義を受けるため教室へ向かった。

 

どれほど時間が経ったのだろうか。
警察庁長官が自分たちを呼んだ理由を考えているうちに、
気づけば教授はすでに講義の終了挨拶を終え、教室を後にしていた。

 

慌ててカバンをまとめ、教室の外へ出た瞬間――
背後から突然、声が響いた。

 

「わっ!!」

 

「うわ、びっくりした……」

 

そこには、先に授業を終えたミナが立っていた。

 

「あなたも、これで今日最後の授業でしょ?」

 

ミナの言葉に、ジュヨルは黙ってうなずいた。

 

「どうせまた、
『明日なんで警察庁長官に呼ばれたんだろう』って考えすぎて、
授業どころじゃなかったんでしょ?」

 

「……うん。まあね。
でも、ミナはどうしてここに?」

 

「決まってるでしょ。
今日で授業終わりなんだから、一緒にご飯食べに行こうと思って来たの」

 

「やっぱりね……。
じゃあ行こうか。今日は何を食べるんだ?」

 

「今日はね、二人きりじゃないの。ついてきて」

 

ミナは自然な動作でジュヨルの手を取り、正門の方へ歩き出した。
普段なら、ミナのこうしたスキンシップを避けていたはずなのに、
この日は不思議と嫌ではなかった。

 

付き合っていると口にしたことはなかった。
けれど、お互いの気持ちは、もう分かっていたのかもしれない。
手をつないで歩く二人の距離は、淡いピンク色に染まって見えた。

 

やがて二人は、大学前のバス停に立った。


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