Chapter _ 7-1 誰かの欲望
山の稜線の向こうから、柔らかな朝日がそっと顔を覗かせていた。冷たい夏の早朝の空気、そして朝から元気に鳴き始めたセミの声がまるで目覚ましのように私たちを起こした。
いちばんに起きたのはサランで、昨夜焚き火をしていた場所をひとりで片付けていた。
やがて一人、また一人と目を覚まし、それぞれ自分の担当エリアを掃除すると、あっという間に後片付けは終わり、私たちは帰る準備を整えた。
「お昼は帰りにサービスエリアで食べようよ! 昨日あれこれ考えすぎて超お腹すいた!」
片付けが終わるやいなや、エビンはさっそくご飯の話を持ち出し、私たちはチュンチョン(春川)サービスエリアで食事を済ませることにした。
チェックアウトを済ませ、昨夜の件について感謝を伝える宿主のおじさんに見送られながら車へ向かった。
「みんな揃った?」
「いえ、まだヨンジ姉さんとエビン姉さんが見えません。」
「さっき二人でちょっと話があるってどこかへ行ってたけど?」
「早く行こうって、あれだけお腹すいたって騒いでたくせに、どこ行ったんだろう! 絶対また“お腹すいた〜”って文句言うくせに!」
「じゃあ僕、連絡してみますね。」
チャンヨンが電話をかけようとした瞬間、二人は分別ごみ置き場の方からこちらへ歩いてきた。
「遅れてごめんね。エビンと残りの分別ゴミしてたの。」
「じゃあ、全員揃ったし出発するよ?」
こうして私たちは長くてスリリングだった江原道(カンウォンド)の旅行を後にし、釜山へ戻った。すぐに日常へ引き戻され、それぞれ学業に追われるうちに、忙しい毎日はあっという間に過ぎていった。
その後、数ヶ月が経った12月。エビンは江原道庁と警察庁から感謝状を授与され、その出来事はニュースでも報道されるほど大きな話題となった。学校からは校長推薦書まで与えられ、卒業と同時に就職のスカウトまでもらうという快挙を達成した。
数日後、私たちはエビンの推薦書とスカウトの祝いを兼ねて、久しぶりに家に集まることにした。
「ピンポーン、ピンポーン」
「ちょっと待って〜! なんでそんな早く来たの。」
インターホン越しにエビンの声が聞こえ、しばらくすると玄関の扉が開いた。扉の前には大きな花束を抱えたギホンが、約束の時間より一時間も早く立っていた。
「え? ギホン? 早いじゃん?」
「うん! みんなより先にお祝いしたくてさ。来る途中に花屋があって、“花がエビンより綺麗だ”って言ってるように見えたから、確かめようと思って買ってきたんだ。やっぱりエビンのほうがずっと綺麗だったけど?」
「はぁ? なに言ってんの! 早く入って!」
ギホンが部屋に入り、エビンを祝っていると、さらに三十分後には全員が到着した。
「ちょっと! いつから二人一緒にいたの?」
「私も今きたばっかだよ!」
「全員揃ったなら、今日は家で出前パーティーしよう!」
私たちはそれぞれ、注文したチョッパル(豚足)、ポッサム、骨付きカルビなどを囲み、ソジュとビールを片手に乾杯した。正直、料理なんてなくても盛り上がるほど、あの時の出来事を話しては泣き笑いし、飲んでは語り——気づけば一時間、二時間と時間はどんどん過ぎ、太陽と月が交代するようにすっかり夜になっていた。
「そろそろ遅いし、みんな帰ろっか?」
「兄さん、もしかして元々そんなに酒弱かったんですか?」
「違うって。これ以上飲んだら明日がしんどいんだよ。」
「え〜ほんと〜?」
「まだ飲めるけど、残念ながら酒が切れただけ。」
「じゃあ二人で酒とアイス買ってきてよ! 大きいカップのやつ!」
「ここからまだ飲むの?!」
「兄さん早く行きましょ! ほらほら、早く! 夜は深いほうが酒もうまいの!」
「わかったよ……行くか……」
行きたくなさそうなギホンの腕を引っ張り、チャンヨンは追加の酒とつまみを買いにコンビニへ向かった。その間、エビンとサランは鳥のように途切れることなくお喋りを続けていた。
そのとき、ヨンジ姉さんが口を開いた。
※本作品はフィクションです。登場する人物・団体・宗教・国家機関等は、実在のものとは一切関係ありません。
本作品の著作権は作者に帰属します。無断での転載・複製・配布を固く禁じます。
作品に関するお問い合わせは、メッセージまたはコメントにてお知らせください。