Chapter _ 2-1 事件の全貌(アリバイ)
私は丁寧に捜査日誌を読み終えると、慎重に口を開いた。
「記録によれば……イ・エビン先輩は地方から来られた方だから、同じ学科の人たちより、主にサークルの先輩方とだけ関わっていたようですが……間違いありませんか?」
私の問いに、会長は静かに答えた。
「そうだよ。エビンはうちのサークルの人たちとだけ仲良くなったんだ。同じ学科の連中とはあまり合わなかったみたいでね。空きコマがあると、いつもサークル室で時間を過ごしていたよ。」
その言葉を聞きながら、私は黙ってうなずいた。
すると、隣にいたミナがふと思い出したように口を開く。
「今日いらっしゃらなかった先輩って……ジュ・ヨンジ先輩のことですか?」
再び会長が答える。
「そう。だけど彼女は“先輩”というより、本館で働いている職員で、学生じゃないんだ。」
「学生じゃないのに、どうしてサークルに参加できるんですか? 何か理由が?」
「実はね、本館の職員でもサークルに加入して活動すれば、校内の評価点をもらえるんだ。それが再契約やボーナスに影響するから、ほとんどの職員がどこかしらのサークルに入ってるんだよ。」
「なるほど……。では会長、このサークルって、最初から推理サークルじゃなくて、脱出ゲームのサークルだったんですか?」
私が尋ねると、会長だけでなく、サラン先輩もチャンヨン先輩も、驚いたようにこちらを向いた。
「どうしてそれを……?」
「このサラン先輩の証言記録を読むと、『脱出ゲームを通じてエビン先輩と仲良くなった』とあります。つまり、このサークルはもともと脱出ゲームをメインにしていた、という結論が出てきて……確認のために伺いました。」
「そのとおりだよ。最初はうちのサークルは脱出ゲ—」
チャンヨン先輩の言葉を、会長が慌てて遮った。
「その話はまた今度にしよう! もう時間も遅いし、お腹も空いたしね。新人も来てるんだし、今日は歓迎会に行こう!」
会長はサラン先輩のほうを振り向き、「一緒に行こう」とやさしく声をかけた。
社交的なミナもすぐに加勢してサラン先輩の手を取り、立ち上がらせる。
みんなが次々とドアの外へ出ていき、私もその後に続こうとしたとき――
ふと、壁に掛けられた一枚の写真が目に入った。
ペンションで撮られた、サークルの集合写真だ。
その下には、手書きでこう書かれていた。
「私たちの推理!」
しばらくその写真を見つめていると、外から私を呼ぶ声が聞こえ、私は急いで部屋を後にした。
※本作品はフィクションです。登場する人物・団体・宗教・国家機関等は、実在のものとは一切関係ありません。
本作品の著作権は作者に帰属します。無断での転載・複製・配布を固く禁じます。
作品に関するお問い合わせは、メッセージまたはコメントにてお知らせください。