Chapter _ 2 事件の全貌(アリバイ)

事件現場概要

1. 時間
2022年12月10日

 

2. 場所
釜山広域市 北区 イルリ洞「クリムワンルーム」109号室

 

3. 被害者
イ・イェビン(21歳・女子大学生)

 

4. 推定死亡時刻
午前3時頃(頸部圧迫による窒息死)

 

5. 室内構造(簡略図)
玄関から室内を見渡すと、左側にはベランダ兼洗濯室があり、その隣に窓とボイラー室が配置されている。
リビングには椅子・ベッド・机がそれぞれ置かれている。
右側の引き戸を開けるとキッチンがあり、その隣にトイレが設置されている。

 

6. 特記事項

  • 国科捜の解剖結果:血中からベンゾジアゼピン、ゾルピデム、アルコール検出

  • 打撲痕:なし

  • 頸部圧迫:あり

  • 床一面が水浸しの状態

  • 室内に他者の指紋・抵抗痕なし

  • シンクには2つの皿とグラス

  • 屋内・屋外ともにCCTVなし

  • 室内から被害者イ・イェビン以外にキム・サランの指紋・唾液を検出

  • 浴室は排水口が詰まり、シャワーが出しっぱなし

  • 天井には強固に固定されたフックあり

7. 事件経緯(現場状況)
リビングの椅子は被害者の足元に倒れており、被害者は天井フックにロープを結び、首を吊った状態で発見された。
浴室からは水が溢れ、ボイラーは作動中。
キッチンには誰かと食事をした形跡があり、洗い物が残っていた。
窓はカーテンで閉ざされていた。


容疑者資料(1)

 

1. 名前:チョ・ギホン
2. 年齢:21歳
3. 職業:大学生(警察行政学科)
4. 関係:恋人(交際1年)
5. 供述
「彼女は普段、睡眠薬なんてなくてもよく眠れる子で……。
僕らは喧嘩もほとんどしない、本当に相性のいいカップルでした。
まさか、僕が取り付けた天井フックで首を吊るなんて想像もできません……。
その日、僕は高校の友達と飲みに行く約束があって、18時から西面にいました。
そのまま一次会、二次会、そしてカラオケに行ったのが……たぶん0時頃だったと思います。
その後、2時あたりから記憶が途切れていて……気づいたら2時30分頃、家にいました。」

 

確認内容

  1. 西面で友人と酒を飲む姿をCCTVで確認

  2. 被害者とのメッセージで口論の記録確認

  3. 平常時から被害者宅への往来頻繁

  4. 記憶が途切れた2時頃、カラオケから出る姿CCTV一致

  5. 学内で「おしどりカップル」として有名

  6. 同じサークルで活動し、深い信頼関係あり


容疑者資料(2)

 

1. 名前:キム・サラン
2. 年齢:21歳
3. 職業:大学生(工学科)
4. 関係:サークル友人
5. 供述
「私はサークル1年のときに先輩と仲良くなって、それからはほぼサークルの人たちとだけ過ごしていました。
特に先輩とは脱出ゲームや旅行を一緒にして、本当に親友みたいな関係でした。
亡くなる当日、先輩から電話が来て、20時頃に先輩の家へ行きました。
彼女は“彼氏が酒を飲むと連絡が途絶える”って愚痴っていて、その日も喧嘩したらしくて……。
だから一緒に飲もうってことになって、彼女の家でお酒を飲みました。
その後、0時頃に家を出てタクシーで帰宅して、ネットをしてから寝ました。」

 

確認内容

  1. 被害者とのメッセージ内容一致

  2. 0時10分のタクシー決済・ドライブレコーダー一致

  3. 被害者がサークル活動中心だったという証言と一致

  4. インターネットIP接続記録一致

  5. ただし、最近被害者と口論した事実あり
    ※本件に関しては一部供述拒否あり


容疑者資料(3)

 

1. 名前:クム・チャニョン
2. 年齢:20歳
3. 職業:大学生(教育学科)
4. 관계:サークル先輩
5. 供述
「その日は家族に会うためにソウルへ行っていました。
休学の相談や、親がやっているペンションの仕事を引き継ぐ話をするためです。
車のブラックボックスと、実家のCCTVを見てもらえればわかります。
イェビン先輩とは深い仲ではありませんでしたが、末っ子の私をよく可愛がってくれました。
でも、こんなことになって……本当に辛いです。」

 

確認内容

  1. CCTV・車両ブラックボックス一致

  2. 釜山に戻ったのは事件2日後

  3. 明確な殺害動機なし

  4. アリバイ成立


容疑者資料(4)

 

1. 名前:チュ・ヨンジ
2. 年齢:25歳
3. 職業:本庁流通管理
4. 관계:サークル後輩
5. 供述
「私はその日、学校行事に必要な氷とクリスマス装飾を会場に搬入して、数を確認していました。
その途中で氷に問題があるのが分かって、注文先に交換しに行ったんです。
学校を出たのが23時頃で、23時30分頃に業者へ到着。
交換後、1時頃に学校へ戻って2時まで作業して、そのまま帰宅しました。
翌朝は普通に出勤して……。
イェビン先輩が、そんなに思い詰めていたなんて、今でも信じられません。」

 

確認内容

  1. 行事会場CCTVで作業確認

  2. メッセンジャーで業者との連絡確認

  3. 業者CCTV一致

  4. 校門の出入記録一致

  5. 自宅アパート記録・CCTV一致


警察 最終結論

 

被害者は地方から来たため交友関係が狭く、サークルの4名を容疑線に置いたが、
供述内容がすべて一致したため、事件は自殺として処理された。

  1. 容疑者4名全員にアリバイあり

  2. 動機があるとすればチョ・ギホン、キム・サランだが、殺害に至るほどではないと判断

  3. 室内に侵入の痕跡なし

  4. 遺族の同意を得た解剖で、アルコール・睡眠薬成分検出 → 他殺を断定するには材料不足

  5. 遺書には自己否定的な内容あり

以上を総合し、本件は自殺として最終判断
現時点をもって事件を終結とする。


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