Chapter _ 2-2 事件の全貌(アリバイ)
私たちはむっとした臭いが漂う地下3階を抜け、地下2階へと上がった。わずか一層違うだけなのに、こちらは湿気やカビの匂いがまだ幾分ましだった。
――階がひとつ違うだけで、こんなに匂いが変わるものなのか。
地下2階の非常口付近から、妙に強い臭気が立ち込めているのに気づき、ぼんやり考え込んでいると――
「ちょっと! また変なこと考えてるでしょ! 早く来ないと置いていくよ!」
エレベーターのドアを押さえていたミナが大声で呼んだ。
はっとして駆け込み、私たちはそのまま本館1階へと上がった。
それからタクシーを二台に分かれて乗り、夕食は西面で食べることになった。
ミナと私は同じタクシーに乗り込み、先ほど見た捜査記録のこと、そして地下3階のあの異様な臭いについて話をした。
「ねえ! 今日やっと正式に部に入ったんだから、もう事件のことは忘れて飲むことだけ考えなさいっての! それにさ、あんた犬なの? さっきから匂い匂いって!」
そんなふうに軽口を叩き合っているうちに、タクシーはもう西面二番街へ到着していた。
降りたところで先輩たちと合流し、私たちは焼肉店へ向かった。
金曜の夜の西面は、まるで「光が止まらない街」そのものだった。
もし空から見下ろしたなら、ここだけ昼間のように輝いて見えるだろう――そう思うほど、無数のネオンが連なり、群衆が溢れ、街が息づいていた。
その喧騒を抜け、細い路地へ入ると、ひっそりとした焼肉店が現れた。
「いらっしゃいませ〜!」
店員に人数を告げ、案内された席へ座る。
そこはネットにもほとんど情報がなく、知る人ぞ知る店、といった雰囲気だった。
「先輩、ここどうやって知ったんですか? 20年近く釜山に住んでて、こんな店初めて来ました!」
ミナは嬉しさのあまり、子どものように無邪気な声を上げた。
そのとき、今まで黙っていたサラン先輩がぽつりと言った。
「ここはね……私たちの部ができて、最初に来た店なの。見つけたのはイェビンでね。彼女がすごく気に入ってて、飲み会っていえばいつもここだった……あそこ、壁の落書き、見えるでしょ。あれもイェビンが書いたもの」
指さされた先を見ると、文字が書かれていた。
『2022年 私たちのミステリー部!
私たちに不可能な脱出はない!
サラン、ギホン、イェビン、チャニョン Forever!』
私たちが壁の文字を読んでいると、店員が肉を運んできた。
頼んでもいないのに出てきたので慌てて言うと、店員は笑って答えた。
「この方たちは私よりずっと長い常連さんですよ。来るたび同じものを頼むから覚えちゃいました。……あれ? 今日はあのショートヘアの女性は来てないんですか? ここに来ない日なんてほとんどなかったのに!」
店員の何気ない言葉に、先輩たちは苦笑いを浮かべるだけで、誰も返事をしなかった。
「先輩方! 私が一杯つがせていただきます!」
ミナが雰囲気を変えようと、ビールと焼酎を器用に混ぜてソメクを作り始めた。
YouTubeで覚えただの、お父さんに教わっただのと言いながら、自由自在に比率を調整するミナに、先輩たちもようやく笑顔を取り戻し、さっきの沈んだ空気はすっかり消えていた。
私も一緒になって飲み、笑い、その瞬間だけは何もかも忘れて、宝石のように輝く海を初めて見た子どものように胸を躍らせた。
その後、二次会のカラオケ、三次会の居酒屋へと流れ、深夜0時頃、ようやく解散となり帰路についた。
家に着いた私は、シャワーも浴びずベッドに倒れ込み、大きく息を吐いた。
飲み過ぎたせいで、吐き出す息に混じる酒の匂いが部屋中に広がり、意識は徐々に霞んでいく。
そしてそのまま、深い眠りへと沈んでいった――。
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