科学研究の歴史に関する読み物が好きだ。

 

研究者が自分の人生を賭けて、こつこつと実験や研究を積み重ねても、大発見をする人など万にひとりもいない。研究史のターニングポイントになるような、ダイヤの原石にも等しき研究をした人も、生きている間は評価されなかったりする。

 

それなのに研究者たちは、自分の疑問やちょっとしたアイディアを大事に抱え、過去の研究を漁り、新たな視点の実験を創造するために七転八倒し、結果が出るかどうか分からない研究に生涯を捧げる。

 

ある研究者の天才的なひらめきによる実験のささやか結果が、人々から理解されず、歴史の波に消えようとしたその時、それに目をつける無名の若手研究者が現れる。政治的な理由から国際舞台で日の目を見ない知見もあれば、知の爆発的なブースターとなる研究がある。

 

そんな研究の歴史の読み物として楽しく、しかも、学問的知見に基づいた試験勉強の仕方まで学べてしまう、という1冊で2度美味しい本がこちら。

 

著者のキャリーさんはNew York Timesの人気科学ジャーナリスト。学習、そして記憶の分野の心理学の研究の歴史を概観し、どう発展したかを楽しく紹介しながら、最後は効果的な勉強に関しての最新の知見までおさえる、という親切な一冊。

 

昔私が子供だった頃、とてもとても田舎に住んでいたのだが、私はその田舎の学校を嫌っていた。あの時は明確な思考にするだけの言葉を持たなかったけれど、田舎の学校の教員がやっている根性論だけの教育を嫌っていたのだ。

 

幸い今は大人だ。勉強法だって、自分で調べて自分で決められる。なんたる幸せ。

 

ちなみに、この本の画像の帯をよく見てもらうと、池谷裕二さん推薦という文字が見えると思う。池谷裕二さんは薬学がご専門の東大の先生で、この方もエビデンスに基づいた勉強方法を、若い人向けの平易な本で出しておられる。その先生が、情報の正確さを認めて、学習科学の紹介本の決定版、と推薦しているので、私も自信を持ってこの記事で通信仲間に紹介している次第。

 

なお、amazonのレビューを見てもらうと分かる通り、この本の評価は二分しています。評価しない人は、なかなか結論が書いてないじゃないか、と思うらしい。

 

だけど、辛口なことを言わせてもらえば、この本くらいの親切な書き方で書かれている内容を頭に入れる手間を惜しんでいるようでは、勉強が上手になるわけがないだろうなあ。

 

シャーロックのマインドパレスには遠く及ばなくても、私たちもひとりひとり自分の記憶の部屋を持っている。その部屋を訪れることなく、その部屋をお手入れすることなく、その部屋を愛することなく、勉強などうまくならない。

 

(Series4の悪役はトビー・ジョーンズ。結局、このシリーズの一番巧いのは、悪役の絶妙なキャスティングだ。その人の演じるそのキャラクターを見たい!という最高のツボをついてくるし、毎回期待を上回るとんでもない演技を見せてくれてきたのは、悪役陣だった。今まではメインの役者がイングランド人で、悪役がアイリッシュとかデンマーク人、というのが気になってたけど、今回はしっかり修正してきたし。)

 

勉強のやり方をこの本よりもっと手っ取り早く教えてもらおう、なんて思う人は、スノーボードの滑り方を5分で口頭で教えてくれ、と言っているようなものだ。

 

とはいえ、そういう人に、とにかくリフトに乗って頂上へ行け(この本を読め)、というのはあまりにもエビデンスベイストじゃない薦め方だろう。それに、自分の若い頃を思い出してみても、例えば高校を卒業したばかりの頃で、こんな本を読めと言われても、(字面は追えても、)うまくは読めなかったと思う

 

というわけで、この本を読んでいまひとつ分かりにくかった、というお若い方がもしいらっしゃいましたら、この本の内容理解のちょっとしたコツを追記しますので、お気軽にコメントください。