年末の大前研一氏のコラム「日本には、チャレンジ精神・起業家精神を育む教育改革が必要」で気になったデータが紹介されていた。

 全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)の調べによると、アメリカ外生まれの起業家が創業した起業に投資することが増えているけれども、日本は、まったく範疇外だという。1980年以前から比べると、アメリカ意外生まれの起業家が創業した企業数は、約6.5%から約25%と、4倍ほどに増加している。1980年以前から米VCが投資した上場企業725社のうち、144社を締める米以外で生まれた起業家を出身地別にすると、上位から、インド(32社)、イスラエル(17社)、台湾(16社)・・。以下、NVCAにあった元資料を見てみると、台湾の次は、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ(6社)、オーストラリア、中国、イラン(5社)、イタリア(4社)、韓国、スイス(5社)、ベルギー、ハンガリー(2社)・・と日本は出てこない。

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 う~ん、確かに日本の経済規模を考えると、このリストにあがらないのは、ちょっと異常な感じがする。この事態を、大前氏は、起業家精神を育まない日本の教育が問題だと言う。確かに、そういう点はあるだろうが、なんでも"教育"のせいにしてしまうのも、なにか判断を停止してしまうようで、あまりに安易という気もする。日本のマーケットは、あえてアメリカに打って出て、リスクを負う必要がないほど充分で適当な市場規模があるとも言えるのだろう。だが・・・やはり、ちょっと大丈夫か?と思う。

 以前、「『フラット化する世界』時代のクリエイティビティ」とエントリーしたが、日本のソフトウェアやウェブサービスでの創造性が、やや欠けているのではないかという懸念を常々抱いているのだ。

 そこで気になるデータをもうひとつ。ダボス会議で有名な世界経済フォーラムが、去年の3月に「2005年世界IT報告書」を出している。情報技術への対応度を指数化したもので、日本はここでも16位。1位から、アメリカ、シンガポール、デンマーク、アイスランド、フィンランド、カナダ、台湾、スウェーデン、スイス、イギリス、香港、オランダ、ノルウェー、韓国、オーストラリア、そして日本。こちらは基準が曖昧とも言えるので、そう過剰に心配するようなことでもないと思うのだが、数年前から喧伝されていた"ブロードバンド大国"はどうなってしまったのか。

 ニンテンドーDSのように、ガジェットを作り込むのは、まだ伝統的に得意なんだろうけれど、時代はガジェットからソフトウェアやサービスに移行しつつある。そうしたサービスは、大企業よりも、個人のユニークなアイデアから生まれ、わすか数人で作り込んだだけであっとうい間に世界中で利用される、ということがよくある。そんな事例を日本で思い浮かべると・・Winny となるわけだが。国家としてのWinnyへの対応が、その後のソフトウェア開発者に余裕と遊び心を失わせている、というのは飛躍しすぎか・・。

 …とにかく、今年は、日本産のユニークなソフトウェアや、メディアの趨勢を変えるようなサービスに数多く出会いたいものだ。