今年最後のエントリーになりそうなので、今回は2006年のネット・メディア業界を振り返ってみよう。思いつくのはこんなところ・・。

・YouTube、MySpaceの大ヒット
・TechCrunchなど商用ブログの影響力増大し、既存ニュースサイトと対等に
・ポッドキャストやビデオで、アマチュアクリエイターが表舞台に
・CNN など大手メディアもユーザー投稿を採用
・RSSアグリゲーターの一般化
・ヨーロッパでは、無料新聞急増
・ロイターなど通信社が元気
・Newsweekなど既存メディア、ネットにシフト
・注目を集めるSecond Life
・コンテンツとメディアが分離

 米Time誌が、「Person of the Year」に"You"を選んだと、前回のエントリーで紹介したように、今年はユーザー自らがコンテンツを作るUser-generated contentが、メインストリームに躍り出た年だった。相変わらずブログ数は伸び続け、SNSのMySpaceやYouTubeのような動画共有サイトなどで、ネット上ではユーザーが作るコンテンツが急増し続けた。そうした流れの中で、名も無いアマチュアクリエイターが、メディアの表舞台に躍り出る機会が増え、まさにメディアは、"You"の時代に入った。

 また、アドネットワークなどの環境が整い、ブログが広告媒体として認知されたことでブログの商用化が成立。中には、TechCrunchのように大手メディアと対等の影響力を持つようになったブログも現れた。限定された読者層を対象にするには、少人数の効率化された制作体制で、軽やかなフットワークを持つブログというメディア形式が適していたのだろう。
 
 いっぽうオールドメディア業界では、大きなリストラ続き、新しい時代に適したスタイルを模索する試みが続いた。Newsweekなど有名雑誌も、ネットでの活動に力点を移し、CNNやNewYorkTimedなどのニュースサイトは、ユーザーによって作られた記事、写真、動画を積極的に取り込もうとしている。

 ユーザーがニュースにアクセスするスタイルも激変している。RSSアグリゲーターとDiggのようなソーシャルニュースサイトの一般化は、ニュース記事とブログ記事を同等に扱うことを促し、様々なサイトを一つの記事単位で横断的で閲覧していくスタイルが一般化した。こうしてユーザーは、新聞を1面から読み、社会面、テレビ欄まで眺めるという習慣は消え、自分の好みにあわせたニュースを、PCやモバイルなど、その場のシチュエーションに合わせて、自分で集めるというスタイルが定着した。

 こうした変化は、コンテンツ制作者と配信メディアが一致していたこれまでの新聞、雑誌のあり方を根本から変えつつある。記事・コンテンツの制作者とそれを配信するメディアの分離が進んでいるのだ。

 そこで勢力を拡大しつつあるのがロイターなどの通信社だ。ヨーロッパで増大している無料新聞は、記事の多くを通信社から購入し、記事制作の低コスト化をはかっている。電車通勤者などを対象にした無料新聞では、記事のオリジナリティよりも、手堅さと低コスト化を重視し、読者も通勤時間ではそうしたコンテンツで充分と判断しているのだろう。

 この無料新聞のようにコンテンツ制作から分離したメディア業は、コンテンツのパーソナライズ技術、広告取得技術を洗練させて、メディアビジネスを多様化させている。こうした流れを明確にしたのは・・もちろんGoogleだ。記事の発信が個人にまで広がり、コンテンツが拡大、拡散し続ける中、重要度を増すのが、集めて選ぶ技術=検索エンジンだ。かつてはこれを"編集者"が担っていたわけですが・・。

 
 さて、今年、欧米で起きたこうした変化は、早晩日本でも起きるはず(一部はすでに起きている)。技術環境にはほとんど違いがないが、あとはメディアのビジネス面を支える広告取得モデルの多様化が課題か。さらに日本で特異なのは、少子高齢化によって人口の年齢構成が大きく変わっていることだ。これまで、主な読者層の高年齢化と退職によって、経済系新聞や週刊誌は、これから数年でさらに急激な部数減少に見舞われることは間違いない。こうした要素も、やや変化が遅く見える日本のメディア界を急変させる要素だろう。
 
 ……ということで、お読みいただきました皆さん、ありがとうございました。
よいお年をお迎えください!