前回のエントリーのようなやや長期的視点と、日々の業界動向を追う短期的視点のバランスで迷うのだけれど、今回は、短期的視点で進めてみよう。アメリカの業界動向を追うことは、2,3年後の日本の動向に影響を及ぼすと思うから、中期的視点とも言えるし。
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 雑誌「Business2.0」のシニア・ライターOm Malikが独立・起業して、自身のブログを商用ブログとしてリニューアルし、「Business2.0」の今後の方針に影響を与えているという話は、以前エントリーした。

 そのOm Malikのブログ「GigaOM」は、その後も確実に成長していて、9月にはバーチャルオフィスを効率的に利用するための「Web Worker Daily」も開始し、12月4日に、オンラインビデオに関するブログに特化した「NewTeeVee」をスタートした。これで、合計4つのブログを展開していて、着実にコンテンツの幅と量を広げている。

 これらのコンテンツは、かつてだったらIT系ニュースサイトが担っていたものだ。IT系ニュースサイトが、徐々にIT系商用ブログ浸食されてきている。こうした変化の原因としては、広告出稿の対象として商用ブログが認められビジネス的に成り立つようになったことも大きいが、少人数で編成されたブログならではのフットワークの軽さと迅速さが評価され、いっぽうニュースサイトの"ニュース"という形式にこだわったやや固めでニュートラルな表現が、一部で飽きられていて、ブログの気軽な意見表明が受け入れられているのだろう。

 また、かつては、有名サイト内で巡回していたユーザーが、del.icio.usのようなソーシャル・ブックマークや、Digg、Techmemeのようなニュースアグリゲーターの登場で、サイトの横断的な閲覧が推し進められ、ますますニュースサイトとブログをまったく同列に扱われるようになったことも重要だ。

 ここで個人的に気になっているのは、日本のニュースアグリゲーターの動向だ。ニュースアグリゲーターも、ユーザーが参加してランキングするDigg型サイト(日本ではソーシャルニュースと言われることが多いか)と、自動的にブログを巡回して、話題が集まっているサイトをランク付けするTechmeme型に分かれる。Diggは、スタートして2年たち、netscapeをはじめとして大量にクローンサイトが出てきているが、日本ではじまったDigg風サービスが、なぜかアメリカほど盛り上がらない。インターフェイスの問題なのか、ニュースソースの数がアメリカほど多くないからなのか・・。

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 もうひとつ、TailRankやTechmemeなどのミームトラッカーと呼ばれる自動巡回タイプは、来年あたり日本でもスタートするはず。本家Techmemeも、徐々に新しいサービスを増やし改良していて、11日には、過去5日分のアーカイブを時系列で"川の流れのように"表示する"riverriver of news"をスタートさせた。地味ではあるけれど確実にユーザーに使いやすいように改良されている。いっぽうのTailRankは、ビデオブログ「Scoble Show」で8日、開発者Kevin Burtonのインタビューが紹介されているところ。あとは、さらにパーソナライズ化が進めば、使い勝手は格段の進歩を遂げるはず。

 今後もブログネットワーク以外にも、さまざまな形でコンテンツが爆発的増えるのは間違いない。が、同時に、拡大拡散したコンテンツを、まとめて整理するニュースアグリゲーターが、ますます重要になるはずだ。
 かつては、その役割は"編集"とも呼ばれていたわけで、これからは、ニュースアグリゲーターの設計に関わることも"編集"の作業と言えるのかもしれない。